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政府の「三位一体の労働市場改革」の実効性
 ~職務給の導入で賃上げが実現できるのか~

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★雇用システム研究所メールマガジン★
< 第259号 2023/11/01 >

http://www.koyousystem.jp
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厳しい暑さから解放され涼しくなったと喜んでいたら、朝晩は急に寒くなりました。
皆さま体調はいかがでしょうか
雇用システム研究所メールマガジン第259号をお送りします。

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□目次 INDEX‥‥‥‥‥

政府の「三位一体の労働市場改革」の実効性
 ~職務給の導入で賃上げが実現できるのか~


■狙いは、個々の企業の実態に応じた職務給の導入で賃上げを実現
■職務給導入企業で異なる3つの特徴
■「高年齢雇用継続給付」と賃金水準のあり方とは無関係
■現時点では三位一体改革による構造的賃上げは不透明
(以上執筆者 溝上 憲文)

■30年続いた技能実習制度を発展的に解消、人材確保・育成を目的とする新たな制度へ
■労働基準法制は「守る」と「支える」の視点で、厚労省研究会
■「ジェンダー平等」「社会的対話」に注力、連合・芳野会長が再任
(以上執筆者 荻野 登)


編集後記(白石多賀子)

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政府の「三位一体の労働市場改革」の実効性
 ~職務給の導入で賃上げが実現できるのか~

 今年6月に閣議決定された政府の骨太の方針
(経済財政運営と改革の基本方針2023)に政府が
推進する「三位一体の労働市場改革」の一環として
「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」が盛り込まれた。

 三位一体の労働市場改革は岸田政権の労働政策の
目玉として岸田文雄首相自身が連合の定期大会など
いろんな場所で発言しており、10月23日の所信表明演説でも
「三位一体の労働市場改革、企業の新陳代謝促進、
物流革新など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めます」
と述べている。

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■狙いは、個々の企業の実態に応じた職務給の導入で賃上げを実現

 その狙いについて「三位一体の労働市場改革の指針」では
「リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた
職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化、
三位一体の労働市場改革を行い、客観性、透明性、
公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることが急務である。
これにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」
と述べている。

 個人に対して時代が求めるスキルを修得するリスキリング
(学び直し)を支援し、企業に対しては求めるスキルを明確に
した職務給の導入を促し、学んだスキルと企業が求める
職務をマッチングさせることで転職を促進し、
賃金が上がっていく仕組みをつくっていくというものだ。

 言うまでもなく職務給は欧米の主流の賃金制度だが、
これまで日本企業は職能給を中心とする年功的賃金制度が
主流だった。
だが指針は年功賃金制についてこう批判する。
「職務(ジョブ)やこれに要求されるスキルの基準も不明瞭なため、
評価・賃金の客観性と透明性が十分確保されておらず、
個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいため、
エンゲージメントが低いことに加え、転職しにくく、
転職したとしても給料アップにつながりにくかった。

 また、やる気があっても、スキルアップや学ぶ機会へ
のアクセスの公平性が十分確保されていない」

 その上で「職務給の個々の企業の実態に合った導入等
による構造的賃上げを通じ、同じ職務であるにもかかわらず、
日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、
国ごとの経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す」
と言っている。欧米型の職務給を礼賛し、
職務給がまるでゲームチェンジャーのように
賃金の内外価格差を解消するような書きぶりになっている。


■職務給導入企業で異なる3つの特徴

 実際に職務給の導入は大企業を中心に徐々に増えている。
一般にジョブ型雇用とは、職務に必要なスキルや資格など
定義した職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて採用し、
雇用契約を結ぶ。
賃金も担当するジョブで決定し、基本的に人事異動や昇進・昇格の
概念がない。
会社の都合で職務の変更や配属先の異動・転勤を行う場合は
本人の同意を必要とするなど会社の人事権を大幅に制限している。
また、採用も新卒・中途に関係なく、必要な職務スキルを持つ人を
その都度採用する「欠員補充方式」が一般的だ。
ノースキルの学生をポテンシャル(潜在能力)だけで卒業と
同時に新卒を大量に採用し、入社後も人事異動など会社が強大な
人事権を持つ日本のいわゆるメンバーシップ型とは違う。

 また、給与制度も賃金も担当する職務(ポスト)ごとに決まる
「仕事基準」であり、職務が変わらない限り、
賃金も固定されて変わらない。
賃金を増やすには、自ら高いポストに必要なスキル修得が求められる。
一方、日本の職能給制度は人に仕事を当てはめる「人基準」といわれ、
人が有する「職務遂行能力」を等級ごとに定義し、
等級の能力要件を満たしているかで賃金が決まる。

ノースキルの新人を長期に育成する以上、
身につけた能力を基本に定期昇給と職能給によって給与が
積み上がっていく仕組みだ。
ここまでは原理的な職務給と職能給の説明であるが、
現在、職務給を導入している日本企業の間でもその仕組みは
企業ごとに異なる。主な違いは以下の点だ。

(1)職務変更によるポストオフ(降格)制度を設けているが、
  その仕組みが企業によって異なる。
(2)管理職に職務給を導入しているが、
  非管理職には導入していない企業も少なくない。
(3)ジョブディスクリプション(職務記述書)の
  定義が企業ごとに異なり、標準化されていない。

 日本企業の職務給では降格・昇格による人材の入れ替えが
発生する。
職務給は職務(ポスト)の対価であるが、逆に職務を果たせない、
あるいは必要とされる職務がなくなるとポストオフ(降格)も発生する。
したがって従来の職能給制度では起こりにくかった降格による
給与減が容易に起こりやすくなる一方、
若くても職務スキルが高いとみなされれば“飛び級”も発生する。
ビジネス環境によって会社が求めるスキルが変われば、
職務変更によってポストオフを余儀なくされる。
例えば大手食品メーカーでは、2年連続でパフォーマンスが
上がらなければ原則として一つ下のグレードに変わる。
当然、給与も下がることになる。

 ただしセーフティネットもある。同社の人事担当者は
「課長の場合はグレード間に重なりのあるレンジ給を入れており、
一つ下がっても基本的に給与が大きく下がらないように工夫している。
部長の仕事は明確なのでシングルレートだが、
課長の場合は大事な仕事に挑戦してもらう場合もあり、
それが難しいからとグレードが下がり、給与が下がれば
モチベーションも下がるからだ」と語る。

 また、大手事務機メーカーもポストオフとなった管理職が
一時的に席を置くグレードを設定し、非管理職にならないようにしている。
その理由は「組織の見直しによって管理職ポストが増えた場合の
候補人材として再び管理職ポストに就く可能性も残している」
(同社人事担当者)と語る。
一方、ジョブ型人事制度を導入してもポストオフに踏み切れない
企業もある。
大手通信業の人事担当者は
「降格に慣れてない管理職も多い。降格されてもちゃんと面倒を
見てくれるのかと言い出す人もいる。
本人が自律的なキャリア形成ができるような仕組みを設けながら、
上がることもあれば下がることもあることを運用の段階で進めていく
必要があると感じている」と語る。
企業によってポストオフの対応もさまざまだ。


■一般社員に職務給を導入しないで転職促進は可能か

 2番目の管理職に職務給を導入し、非管理職は別の制度とする
企業も少なくない。
例えば一般社員には職能等級制度、管理職には職務等級制度を
導入するなど分けている企業もある。
前出の大手通信業も非管理職は従来の役割等級制度を残している。
人事担当者は「管理職はジョブ型で適所適材の配置をしていくが、
一般社員の間は専門性を高めていく時期であり、専門性重視で、
専門分野ごとに専門性があれば昇格していく仕組みにしている。
成長の支援をして一人前になるまでとし、
やはりジョブやポストによって給与が決まる仕組みというのは
一般職の場合はまだ早いだろうと考えた」と語る。

 前出の食品メーカーも一般社員には職務給を導入していない。
その理由として「いろんなことにチャレンジしてもらいたいたい。
当社は新しい食品をつくるとき、研究開発や営業企画、
マーケティングなどいろんな部門の人間がプロジェクトチームを作る。
そうした経験が本人の成長にもつながるし、
広い視野と知識を身につけてもらうためにあえて
ジョブディスクリブションを作らないし、ジョブ型を入れていない」
(人事担当者)という。

 ノースキルの学生を大量に採用する新卒一括採用の日本では
入社後の育成期はジョブ型ではなく、部門を超えて様々な経験を
可能にする制度が理にかなっていると思われる。
また、政府の三位一体の労働市場改革では
「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」と言っているように
2つの制度の併存を許容しているように見えるが、
転職者の大半を占める20代~30代前半の非管理職が職務給でない
とすると、職務が明確な職務給の導入によって労働移動を促し、
賃金の上昇につなげるという政府のシナリオ自体も
崩れることにならないか。


■現時点では三位一体改革による構造的賃上げは不透明

 また、3番目の特徴であるジョブディスクリプションが
個々の企業で異なり、欧米のように各産業・職種別横断で標準化
されておらず、個別性が強すぎると労働移動の円滑化も阻害する
ことにもなりかねない。
この点について政府の三位一体労働市場改革分科会で
コーン・フェリー・ジャパンの柴田彰コンサルティング部門責任者は
「ジョブは企業独自性がかなり高いと、労働市場の人材流動性を
低めてしまうところがあって、基本的にはポストが標準化されていれば、
人材の代替可能性は高まってくるので、欧米の企業のように労働市場の
流動化には資するが、組織設計が各社で違うという状況はボトルネック
になっているのではないか」と指摘している
(第1回三位一体労働市場改革分科会議事要旨)。

 政府は年内に「職務給(ジョブ型人事)の日本企業の人材確保の
上での目的、ジョブの整理・括り方、
これらに基づく人材の配置・育成・評価方法、
ポスティング制度、リスキリングの方法、従業員の
パフォーマンス改善計画(PIP)、
賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係、休暇制度などについて、
事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うための参考となるよう、
多様なモデルを示す」(指針)としている。

はたしてこれによって職務給の導入が進み、
労働移動が促進されることによって賃金が上がる構造がつくれるのかどうか。
現段階では先行きは不透明といえる。     (溝上 憲文)


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■30年続いた技能実習制度を発展的に解消、
 人材確保・育成を目的とする新たな制度へ

 法務省出入国在留管理庁は10月18日、
「外国人材の受け入れ・共生に関する閣僚会議」の下に設置した
「技能実習制度および特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の
「最終報告書たたき台」を公表した。
たたき台は、「現行の技能実習制度を発展的に解消し、
我が国社会の人手不足分野における人材確保と人材育成を
目的とする新たな制度(以下「新たな制度」)を創設する」
としている。

 1980年代後半のバブル経済当時、人手不足感が高まり、
海外人材を受け入れようという動きが出てくる。
その結果、1993年に導入されたのが、技能実習制度。
同制度の目的・趣旨は、基本理念として、労働力の需給の
調整手段ではなく、わが国で培われた技能、技術又は知識の
開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う
「人づくり」に寄与するという国際協力の推進を前提としていた。

 しかし、研修制度が事実上、就労機会として活用され、
実態的には低賃金労働者の受け入れ制度として、
徐々に中小企業に認知されていった。
さらに、研修・技能実習生の失踪・逃亡などの課題が顕在化。
加えて労働基準法に違反する低賃金や超過勤務手当の不払い、
雇用主からの暴力やセクハラ・パワハラなどの不正行為も
多く発生していた。
期間は最大5年で、2022年末時点での技能実習生数は、
約32万5,000人。

 一方、特定技能制度は、少子高齢化による人手不足をうけて、
労働力が特に不足している特定産業分野において人材を
確保することを目的に、2019年4月に創設された在留資格。
その要件は、

(1)日本語と技能の水準を測る「特定技能評価試験」に合格する、
(2)「技能実習2号」を良好に終了し、「特定技能1号」に移行する

 ------のいずれかのルートを通る必要がある。

 現在特定技能1号(在留期間通算で上限5年、家族の帯同不可)の対象は、
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、
電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、
航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の計14の分野
(2023年5月時点)。
「特定技能2号」(熟練した技能を要する業務、期間更新の上限なし、
要件を満たせば家族の帯同可能)の対象は建設と
造船・舶用工業の2分野となっている。

 今回提言された新たな制度では、基本的に3年の育成期間で
現在の特定技能1号の水準の人材に育成。
受け入れ対象は、特定技能制度と同様に
「特定産業分野」に限定し、受入れ分野ごとに
受入れ見込数を設定する。
従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、
「主たる技能」を定めて育成・評価する。
試験不合格となった場合は、再受験のための最長1年の
在留継続を認める。
なお、現在の特定技能制度は、適正化を図った上で
現行制度を存続する。

 実習期間中に劣悪な職場環境下でも移動できず、
人権侵害などが発生する背景とも指摘されている転籍については、
「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、
手続きを柔軟化。本人に転籍の意向がある場合、
同一企業での就労が1年を超えるケースや、
技能検定基礎級の合格、日本語能力試験N5合格など一定の
要件を満たす場合、同一分野内の転籍を認める。

また、新たな制度から特定技能1号への移行は、
「技能検定3級または特定技能1号評価試験合格」
「日本語能力試験N4合格など」を条件とする。

 現行の技能実習制度は2024年に新制度へ移行する見込みだが、
「第二の開国」とも言われた「特定技能制度」の比ではないだけに、
多文化との共生がますます問われることになる。
そのためにも当該の組織・企業だけでなく、
国や自治体は生活相談など支援体制の抜本的な
整備・強化が求められる。


■労働基準法制は「守る」と「支える」の視点で、厚労省研究会

 厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会
(座長:今野浩一郎学習院大学名誉教授)」は
10月20日、今後の労働基準法制のあり方などに関する
報告をとりまとめた。
報告は、企業を取り巻く環境や労働市場の変化のなかで、
「働く人が希望する働き方を実現し、能力を十分に開発し
発揮できる働く環境を構築しなければ我が国の発展はない」
との考え方を出発点に、これからの労働基準法を中心とした、
労働基準法制のあり方を検討。

 これまでの「守る」の視点に加え、
個別・多様化する働く人の希望を反映させる「支える」の
視点を打ち出した。

 個人と組織の関係性の変化について報告は、
自発的なキャリア形成と、ライフステージ・キャリアステージ
にあわせた多様な働き方を求める労働者が増えていると指摘。
企業にとっては、これまで以上に長期的な視点に立って
優れた人材を確保し活用することが重要になっているとしている。

 両者が良好な関係性を保っていくためには、
正規雇用・非正規雇用の雇用形態等にとらわれず、
「多様なチャネルを通して労使コミュニケ-ションを図っていくこと」
の重要性を指摘したうえで、
「働く人が将来のキャリアを見据えて企業の枠を超えて働ける環境
が確保されていることが重要である」と強調している。

 これに加え、同じ場所で画一的な働き方を前提としない状況が
広がっていることを踏まえ、

(1)労働条件の設定に関する法制適用の単位が事業場単位を
  原則とし続けることが妥当なのか、
(2)リモートワークの普及等により事業場外労働に係る法制の
  在り方はどのように考えるべきか、
(3)フリーランスで働く者が増加し、業務に関する指示や
  働き方が労働者として働く人と類似している者も見受けられる

 ------ことを検討課題にあげている。

 そのうえで、これからの労働基準法制の在り方を
考えるに当たっては、
「守る」と「支える」という2つの視点で、
検討を進めていく必要があるとしている。

 労働基準法制は、心身の健康が確保され、
人たるに値する生活を営むための必要を満たす労働条件を
「守る」にとどまらず、働く人の働き方やキャリア形成の希望を叶え、
より良い職業生活を送ることができるよう
「支える」ことについても適切に効力を発揮するよう
見直すことが必要であると課題提起。

 企業が働く人のキャリア形成を支える取り組みを
後押しできるよう、
「多様性尊重の視点」に立って整備されていくこと
が重要であるとした。

 そのうえで、新しい時代に即した労働基準法制の
方向性について、労働基準法で定める労働条件は
最低のものであり、労働者の健康を確保することは
企業の責務であると改めて指摘。

 一方、時間や場所にとらわれない働き方の拡大を踏まえ、
労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、
勤務時間外や休日などにおける業務上の連絡等の在り方
についても引き続き議論がなされることが必要としている。

 また、リモートワークや副業・兼業のように
職場の概念が変わり、フリーランスなど雇用によらない
働き方をする者など、従来の労働基準法制のみでは
有効に対応できない場合、労働基準監督署による
事業場への臨検を前提とした監督指導が馴染まない場合など、
新たな課題については、
「時代に合わせた見直しが必要である」と指摘している。

 さらに、労働市場の機能等を通じた企業の
自主的な改善の促進を課題として提起。

 企業の自主的な取り組みを支援し促進することを
通して法制度の履行確保を図ることを検討課題にしている。
また、企業に対して労働条件、職場環境等に関する情報の開示を促し、
企業が労働市場における評価を通して労働条件、
職場環境等の改善を進めるという好循環を形成することで
労働市場の強化を図り、市場メカニズムを活用する方法を
検討することが必要であるとしている。

 加えて、企業に期待することとして、
?ビジネスと人権の視点、
?人的資本投資への取り組み、
?社内外の働く人に対して広く情報を開示

 ------をあげる。


■「ジェンダー平等」「社会的対話」に注力、連合・芳野会長が再任

 労働組合の中央団体「連合」(684万人)は
10月5~6日に定期大会を開き、月例賃金の持続的な改善や、
あらゆる政策におけるジェンダー主流化の追求などを柱
とした向こう2年間の運動方針を決定した。

 役員改選では、前回大会で連合初の女性の会長に
選ばれた芳野友子氏(JAM)が再任された。

 あいさつで芳野会長は、
「経済や社会の状況が、生活者にとって厳しい二年間だった」
と振り返りつつ、
「『コロナ禍』『物価高』『円安」』の『三重苦』に打ち勝つため
『賃上げ』を強く訴えながら、春季生活闘争に挑んだ。
政府、経済界とも共通の認識として『政労使の意見交換』の
場が設定され、大企業だけでなく中小企業でも賃上げが
実現できるように、サプライチェーンにおける原材料費や
労務費の価格転嫁の必要性が確認された結果、
30年ぶりの高水準で賃上げが実現した。

 また、このことが、過去最大の最賃の引き上げにつながった」
と振り返ったうえで、賃上げが過去2年間の取り組みの中でも
最も大きな成果と評価した。

 そのうえで、向こう2年間の運動のあらゆる取り組みの
プラットフォームとして、
「ジェンダー平等・多様性推進の取り組み」と「社会的な対話」
をあげた。

 芳野会長は、「見た目には、性別役割分担が払拭されている
かのように見えても、中身が伴っていなければ、
ジェンダー不平等が解消されるとは言えない。
ジェンダー平等・多様性推進は、本質的には人権問題だ」と強調。

「性別に関わらず、あるいは性的指向に関わらず、
一人ひとりがその存在を尊重され、能力を発揮し、
自己実現ができ、社会に参画することができることが
望ましい社会だ。
これまでの男性中心の社会を脱して、
一人ひとりが尊重される社会に作り替えていくことは、
私たち労働組合が担わなければならない課題の中でも、
大きな一つではないだろうか」と訴えた。

 もうひとつ注力すべきこととして、
「社会的対話」をあげた理由について、
4月に公表した調査で、連合を身近な存在として感じている
のは2割程度にとどまったことをあげ、
「ほぼ、労働組合の組織率の範囲でしか連合は存在していない
に等しいと自覚する必要がある」と指摘。

「自分たちの外の世界とのコミュニケーション、
つまり『社会的な対話』がこれからの連合には非常に
重要なポイントになってくる」と強調。
そのうえで、「連合を意識してもらい、身近に感じてもらうために、
様々な方々との対話を大切にしていきたい」と述べた。

 運動方針は今期の運動の基軸について、
「足元のコロナ禍や物価高、中長期にわたる国内外の構造的課題を踏まえ、
『働くことを軸とする安心社会』に向けて
社会経済のステージ転換を確かにする2年としていく」と強調。
重点分野は、

(1)すべての働く仲間をまもり、つなぐための集団的労使関係の追求と、
 社会に広がりのある運動の推進
(2)安心社会とディーセント・ワークをまもり、創り出す運動の推進
(3)ジェンダー平等をはじめとして、
 一人ひとりが尊重された「真の多様性」が根付く職場・社会の実現

 ------の3本とした。

 来賓として、岸田文雄内閣総理大臣があいさつし、
賃上げ率が30年ぶりの高水準を記録するとともに、
最低賃金が全国加重平均で1,000円超となったことから、
「ここに至る連合の皆様の多大な御尽力に敬意を表し申し上げる」
と感謝の意を表明。そのうえで、
「賃上げ、そして人への投資による経済の好循環を実現し、
明日は今日よりも良くなると実感できる日本経済としていくため、
引き続き皆様方とコミュニケーションを密に取りながら、
全力で取り組んでいく」と述べ、
連合との対話に前向きな姿勢を示した。     (荻野 登)



★☆★編集後記★☆★


気がつけば11月、紅葉の便りが届いています。

 10年前の2013年の新語・流行語大賞のトップ10に「ブラック企業」
が入りました。今は、緩すぎて成長機会を見いだせない
「ゆるブラック」なる言葉が出てきました。

 リクルートワークス研究所の2019年から2021年卒社員の調査では、
「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」、
「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる」や
「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」の回答比率が高く、
自分のキャリアに不安を感じています。

 新入社員の“やりがい”や“成長を感じる仕事”への指導は難しい
側面があります。

 新入社員への人材成長計画書を作成し、
本人の意欲を大事に面談等でコミュニケーションをとることが重要です。
生産性を高めるためにも「ゆるブラック」と言われない
教育・指導をしましょう。

 岸田首相は、経済対策で「国民に税収増を還元」すると表明されました。
政府案では、所得減税4万円、
非課税世帯に7万円給付の還元方法案が話題になっています。

 インフルエンザが流行っています。くれぐれもご自愛ください。
                             (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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