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発刊済みメールマガジンMail Magazine

企業の成長に不可欠なリスキリング支援
 ~後ろ向きの中高年社員を自発的学習に誘導するサントリー~

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★雇用システム研究所メールマガジン★
< 第263号 2024/03/01 >

http://www.koyousystem.jp
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吹く風や寒さの中に春の気配を感じる頃となりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第263号をお送りします。

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□目次 INDEX‥‥‥‥‥

企業の成長に不可欠なリスキリング支援
 ~後ろ向きの中高年社員を自発的学習に誘導するサントリー~

■経営トップ主導で50代の生成AIの学習を必須化
■43歳の社員をターゲットに個人面談を実施し、自発的学習に誘導
■定年後も見据えたキャリア形成支援は会社の業務活性化にもプラス
■デジタルスキルの習得などシニアを積極的に活用
(以上執筆者 溝上 憲文)

■2024春闘がスタート------労使トップのベクトルは同じ、ホンダなど早速満額回答
■人手不足と世間相場が後押しする初任給・賃金の大幅引き上げ
■厚労省が「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定
(以上執筆者 荻野 登)


編集後記(白石多賀子)

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企業の成長に不可欠なリスキリング支援
 ~後ろ向きの中高年社員を自発的学習に誘導するサントリー~

 「人への投資」が叫ばれ、春闘での賃上げが注目されているが、
それと並んで重視されているのが社員に対するリスキリング(学び直し)
への投資だ。
 社内業務でのデジタル機器導入による対応をはじめ事業の効率化や
ビジネスモデルの変革に必要なスキルの習得など、社員の学び直しの
必要性が増している。

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■経営トップ主導で50代の生成AIの学習を必須化

 一方、人生100年時代といわれ、職業人生が長くなるなかで
60歳定年以降を見据えたキャリア形成のための自律的な学び直しも
求められている。

政府も「三位一体の労働市場改革」の柱の1つにリスキリングを掲げ、
在職者の学び直しへの直接的な支援策として
「教育訓練給付」の拡充。雇用保険制度見直しでは、教育訓練給付の一部に
一般財源を投入するなど学び直しを後押ししている。

 ただし、多くの企業では伸びしろのある20~30代への教育を重視する傾向があり、
40代以降の中高年層の教育には後ろ向きだ。
また、会社がどれだけ豊富なメニューを揃えても目の前の仕事に忙しい上に
「プライベートの時間が減る」とか、将来のキャリアを考える余裕のない人もいれば、
今さら学び直しなんてと敬遠する中高年も少なくない。

 働き手の主体的な取り組みを促すには、経営トップが率先して自社の目指すべき
ビジョンや方向性を明示した上で、学び直しの重要性を周知することが重要だ。
その点、サントリーホールディングスの取り組みは注目に値する。
1つは同社の新浪剛史社長肝いりで23年11月にスタートした50歳以上の社員必須の
生成AIの研修だ。新浪氏が年齢に関係なくデジタルは今後重要になる。
と言って導入し、50歳以上の社員全員が生成AIの研修を受講させている。
50代以上が生成AIを使いこなせるようになれば、
例えば時短勤務になっても同質の仕事ができるようになり、
仕事の幅が広がる可能性もあると、そのメリットを周知している。


■43歳の社員をターゲットに個人面談を実施し、自発的学習に誘導

 また、同社は社内大学であるサントリー大学の学部の1つとして
「100年キャリア学部」は23年4月に設立している。
40代以上をメインターゲットに自らのキャリアをデザインするための
マインドセットとスキルセットの獲得を支援する目的で設立されたものだ。
同社の人事担当者は「人生100年時代になれば80歳ぐらいまで働く人が増えるなど、
キャリアや職業人生も長くなる。当社は65歳定年だが、ここで終わりではなく、
その先を含めて自分のキャリアを描き、そのために必要なスキル学んだりしながら、
常にアップデートしていくことが求められる」と、学部の目的を語る。

 学部の講座はキャリア自律やメンタルタフネスなどのマインドセットの
講座に始まり、資格取得などのスキル学習のほか、業務外で社外のNPO法人業務に携わる
「越境学習」、地方自治体にミドル・シニア社員を2年間出向させる「地方創生人材制度」
の紹介や体験記も掲載するなど多彩なコンテンツを揃える。
しかし豊富なメニューを揃えても、将来のキャリアを自ら考え、
自発的に受講しなければ身につかない。

 それを誘導するのが同社の「キャリアワークショップ」だ。
人事部内のキャリア推進センターが主催し、入社3年目と10年目、
43歳と58歳の節目に社員全員がキャリアコンサルタントの資格を持つ社員の面談を
受けるなどキャリアに関する研修を受講する。
実は以前は53歳になった社員を対象にしていたが、10歳前倒しし、
2021年から43歳時に実施することになった。なぜ43歳なのか。

人事担当者は
「当社は課長層で55歳、部長層が57歳でポストオフになる。
職位でポストオフ年齢が異なるうえに、マネージャー職につかずに53歳を迎える人もおり、
そもそも53歳という年齢での実施がすべての参加者にとって最適なタイミングとは限らない。
53歳では遅すぎると考え、もっと早い段階で先々を見据えてキャリアや人生について
考える機会を設けることが必要と判断し、折り返し時点の43歳にした」と語る。


■定年後も見据えたキャリア形成支援は会社の業務活性化にもプラス

 43歳のキャリアワークショップは、今までの自分のキャリアを振り返り、
モチベーションの源泉について考える外部講師によるセミナーを受講。
その後、自社のキャリアコンサルタントによる1対1の面談を通じて後半の人生を
どのように歩んでいくか、そのために何を学ぶ必要があるのかを考える。

 その際に100年キャリア学部の講座を紹介し、学習したい講座を選んでもらうなど
背中を押すことで学びに誘導する仕組みになっている。

 多くの企業では中高年のリスキリングの優先順位は低いが、
定年後も見据えたキャリア形成の支援を行うことに企業としてどんなメリットがあるのか。
人事担当者はこう語る。

「若いときはそれこそ昇進をめざして先に進みたいという思いもあるが、
40代半ばになると、この先何をめざすべきなのかがわからず、
人によっては仕事に対するモチベーションが下がることもあるかもしれない。
そのときに自分と向き合い、やりたいことを見つけて社員一人ひとりが進化していくことは
会社にとっても大事なことだと思う。
サントリーを卒業するまでだけではなく、その先を含めて生き生きと働きたいという
社員がいることは会社にとってもプラスになるはずだと考えている」

 厚生労働省の2022年の「労働力調査」によると、
正社員のうち45歳以上の比率が46.2%を占めている。
いずれ50代以上が社員の半数以上を占めるのは時間の問題だ。
中高年層が定年後の働き方も見据えて自発的に学ぶ環境を整備することは、
モチベーションの向上による戦力化にも貢献するだろう。


■デジタルスキルの習得などシニアを積極的に活用

 大企業だけではなく、中小企業でも学び直しに注力している企業もある。
愛知県名古屋市にある株式会社村瀬鞄行というランドセルの
製造・販売を手がける従業員36人の会社がある。
同社の販売店は名古屋以外に東京と大阪にあるが、
その主力を担っているのが女性のパートタイム社員14人だ。

 パートの年齢はほとんどが60歳以上で、70歳の女性も働いている。
そして年に1回、大阪・東京で働くパート社員全員が名古屋に集合する
1日研修を実施している。

研修内容は、大きく以下の3つだ。

(1)店舗でお客に商品を紹介したり、ネット注文の顧客に対応するための
  タブレット端末の操作、その他、ExcelなどのPCスキルを学習
(2)ペイペイなど、支払方法の多様化に対応したレジ、決済方法の学習
(3)顧客接点の新しい営業・販売方法など、毎年変更する販売マニュアルの習得など。

 目的は業務の効率化と販売戦略の革新に伴うノウハウの習得による売り上げの拡大にある。
同社は元々ランドセルの製造が中心で卸の注文に応じて製造していたが、
その後、自ら企画・デザインし、直接販売するようになってから業績も好転した。
今ではネットでの販売を行っているが、タブレット端末による業務の効率化や新たな
決済方法に必要なスキルが販売員には不可欠になっている。

 同社の社長は
「販売スタッフはほぼ全員が高齢女性だが、新しい機器に興味を持つ人も多く、
熱心にメモをノートに取り、わからないところは若手の社員に繰り返し聞くなど、
熱心に勉強している」と語る。若手社員に限らず、
シニアの学び直しを積極的に促すことは、人手不足解消だけではなく、企業の成長にも貢献する。
                                (溝上 憲文)


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■2024春闘がスタート------労使トップのベクトルは同じ、ホンダなど早速満額回答

 2024年の春闘(春季労使交渉)は、2月1日に連合と経団連、
8日に連合と日本商工会議所のトップが意見交換したのに続き、
主要産業の先陣を切って基幹労連傘下の「鉄鋼総合」「総合重工」「非鉄総合」の
大手組合が9日に経営側に要求書を提出し、本格的に交渉がスタートした。

 その後、交渉に入ったホンダとイオンリテールが21日、早々に労働組合の要求に
満額回答するなど、昨年に続き、早期・満額解決がトレンドとなりつつある。
焦点は昨年30年ぶりとなる高い水準の賃上げにもかかわらず、
2年にわたって続く実質賃金割れの状況に対して、物価上昇に見合う持続的な
賃上げが実現するかどうかに加え、
価格転嫁の進展によって中小企業に賃上げが波及するか。

 政府がめざすデフレからの完全脱却にとっても今春闘は重要な意味合いを持ち、
金融政策面からもマイナス金利解除への転換に当たっても大きな判断要素となるだけに、
労使交渉の成り行きに注目が集まる。

 まず、労使のトップはそれぞれの懇談で、交渉の方向性について一致を確認する
という異例の幕開けとなった。
連合と経団連の懇談会であいさつした十倉雅和・経団連会長は、
「現在のコストプッシュ型のインフレを、デフレから脱却できる千載一遇のチャンスと捉え、
今年は昨年以上の熱量と決意をもって、物価上昇に負けない賃金引上げをめざすことが、
経団連・企業の社会的責務と考えている。
物価動向を重視し、ベースアップを念頭に置きながら、自社に適した方法で、
できる限りの賃金引上げの検討・実施を呼びかけるなど、昨年以上の賃金引上げに
果敢に取り組んでいる。
 特に今年は、賃金引上げのモメンタムを、中小企業の構造的な賃金引上げへと
着実に波及させることが重要である。
そのために、価格転嫁や価格アップに対するネガティブな意識を、
社会全体で変えていく必要がある」と強調した。

 これを受け芳野友子・連合会長は、賃金も物価も経済も安定的に上昇する
経済社会へとステージ転換をはかるため、
「今季闘争をその正念場と位置付けて取り組みを進めている」と説明。
そのうえで、「そのカギは大企業から中小・小規模事業者までのすべての段階で、
労働者が賃上げの効果を実感することにある。
実現のためには、商取引の各段階で『労務費を含む価格転嫁』が確実に行われ、
取引先の各企業において賃上げ原資を確保することにあると確信している」と主張した。

 まとめのあいさつで十倉会長は、「労使は同じベクトルに向かって進んでいると
本日改めて認識した。
『連合白書』にある通りステージを変えなければならない。

コストプッシュインフレで始まったインフレであるが、
今後はデマンドプル型に変えていき、
2%程度の適度な物価上昇に対しベースアップと生産性向上で上回っていくことをめざすべきである」
と述べるなど、労使交渉の方向感と今季交渉の意義についてほとんど
相違が見いだせないほど呼吸があっている。

 連合と中小企業の会員が多い日本商工会議所との意見交換では
「持続的賃上げ、価格転嫁、人手不足への対応」がテーマとなった。
日商の小林健会頭はあいさつで、
「日本経済が真に力強さを取り戻すために、物価と賃金の好循環により
実質賃金を上げていかなければならない。
その鍵となるのは雇用の7割を占める中小企業の賃上げである。
非正規雇用の方々も含め、賃上げの動きを広げていく必要がある」
との意向を示した。

 そのためには原資の確保が不可欠であり、
「自らの自己変革による付加価値向上とともに、価格転嫁の商習慣化が重要である」
と強調。
連合に対しても「労働組合の立場からも取引価格の適正化に声を挙げていただき、
消費者でもある労働者に働きかけていただきたい」と要望した。

 これを受け連合の芳野会長は、
「日商とは、中小企業の発展とそこで働く人の幸せのために今何をすべきか、
問題意識が重なる部分が多くあると感じている」と表明。
そのうえで、中小企業では、人手不足が非常に大きな課題となっており、
人材の確保・定着のためには、月例賃金にこだわった賃金の引き上げの必要性を訴えた。

 意見交換を踏まえて、連合と日商は、中小企業の持続的な賃上げに向けて、
取引価格の適正化などを後押ししていく考えで一致。
今後も必要に応じて意見交換の機会を設けることを合意するなど、
価格転嫁や取引の適正化に向け共同歩調をとることを確認した。


■人手不足と世間相場が後押しする初任給・賃金の大幅引き上げ

 2月中旬以降、大手企業では労使交渉が本格化したが、
労働側が設定している3月13日を中心とする集中回答日に先立って、
要求満額だけでなくプラスアルファの回答を経営側が示して
事実上決着するケースが相次いでいる。

その先行回答・早期解決の流れが、同一産業内や同一地域における
賃上げ相場を形成し、波及していく賃金の決定メカニズムが生まれつつある。

 9日に要求を提出し先陣を切った基幹労連傘下の大手組合のうち三井金属は14日、
正社員を対象に月2万円のべースアップを4月に実施すると発表した。
労働組合の要求額(1万5,000円)を上回り、定昇相当分を含む賃上げ率は7.7%に相当する。

 同社は優秀人材の獲得のため、初任給の見直しも併せて実施するとし、
博士卒を45,000円、修士卒を35,000円増額。
事業を支える高校卒社員の初任給も20万円台の水準となる。
「今後も、採用競争力の強化を図り、優秀人材の獲得に繋げる」としている。

 これに続いて、21日にはホンダ、マツダが満額回答を示し
(ホンダは組合の2万円要求に研修関連の費用の原資を給料に再配分した
1,500円を加えた計月2万1,500円で妥結)、流通小売の関係でもUAゼンセンが同日、
イオンの総合スーパー子会社イオンリテールがパート従業員の時給を7.02%
(実額ベースでは76.66円)の引き上げで妥結したと発表した。

 また、名古屋鉄道は同日、2024年度に入社する総合職の大卒初任給を30万円に
すると発表した。

 1月16日に経団連が発表した
「2023年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によると、
前年の春闘における労働組合等の要求項目に対する回答状況では、
月例賃金について要求通りが44.9%を占め、 要求を上回るが12.6%となり、
約6割が満額かそれ以上で妥結している。
さらに初任給の引上げついても、要求以上が39.7%、要求通りが49.2%にも達していた。
昨年も結果的に満額解決の流れが形成されていたことになるが、
これまでの動向をみると、今季も同様のトレンドが生まれつつある。

 金融・保険関係では特に、人材獲得競争がし烈化を見せており、
初任給の大幅引き上げと同様に、賃上げについても6~7%の賃上げ相場が形成されつつある。

 流通サービス関連でも、イオングループで形成されてきた、
パートタイム労働者7%超、正社員は6%超~7%の賃上げ相場が地域の
同業他社に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

 また、半導体製造の台湾TSMC熊本工場の稼働で地域経済の活性化に
注目が集まる九州の金融機関でもメガバンク並みの初任給の水準への
引き上げ表明が相次いでいる。

 こちらは地場相場に影響を受け、人材獲得競争の激化を背景とした
賃上げ連鎖の動きとみることができる。

 昨今の動向をみると、物価への配慮だけではなく、
こうした世間相場を意識して初任給・賃上げを決定する傾向がより強まっている。
厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、
こうした企業のマインドの変化を反映して、賃金改定にあたって重視する要素に
変化がみられる。
2023年の同調査(11月28日発表)では、
企業業績(50.3%)、労働力の確保・定着(46.5%)、雇用維持(41.3%)、
物価の動向(27.1%)、世間相場(23.4%)の順だったが、
前年に比べて企業業績は5ポイント・ダウン、物価が20.3ポイントの大幅増。

労働力の確保・定着、雇用の維持、世間相場は6~7ポイント伸びている。

 人材の確保・定着(人手不足)が企業業績に並んで賃金改定の重要な要素と
なっていることがわかる。
それに加えて、当然ながら物価への配慮は大きくなっており、
さらに注目すべきは世間相場の影響力が強くなっていることだ。

 実は、日銀の植田総裁が、1989年に発表した論文
「効率的賃金理論と日本の賃金構造」(植田和男・岡崎敬子、『経済研究』40(3))では、
同調査を使って賃金の決定要因を分析しており、賃金決定に当たって
「世間相場」(産業内の平均賃金)の効果に着目している。
「世間相場」を重視する場合、参考にした企業は、
「同一産業同格企業」「同一地域企業」の順で多いとの結論を導いている。

 こうした過去の研究成果も踏まえて、
植田総裁は金融政策の転換に当たって重要な判断要素となる賃上げ動向を
見守っているのかもしれない。


■厚労省が「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定

 厚生労働省は2月8日、「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定し、公表した。

 個人宅に出向き、ご家庭と直接労働契約を結び、
その指示のもと家事一般に従事する家政婦といった家事使用人については、
通常の労働関係と異なった特徴を有するものであり、国家による監督・規制という
法の介入が不適当であることから、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)
第 116 条第2項により、同法の適用が除外されている。

 労働基準法上の「家事使用人」に該当する場合、労働安全衛生法、
最低賃金法、賃金の支払の確保等に関する法律、家内労働法、
労働者災害補償保険法、育児・介護休業法についても適用除外となる。

 なお、いわゆる家事代行サービス業のような、個人家庭における家事を
事業として請け負う者(企業等)に雇われて、
その指揮命令の下に当該家事を行う者は、家事使用人には該当しない。

 一方、労働契約法、公益通報者保護法、個別労働関係紛争の解決の促進に
関する法律、職業安定法の法令については「家事使用人」についても適用がある。

 こうしたなか2015年、家政婦の女性が寝たきり老人の介護・家事に従事し、
1週間泊まり込みで働いた後、心疾患で死亡。
7日間の労働時間は、介護が31.5時間、家事が101.5時間で、
過労死基準を充足するため、夫は労災補償を請求したが、不支給となった。
その理由が労働基準法が適用されない「家事使用人」だからということだった。
これに対して夫は、国を相手にその取り消しを求めた訴訟を起こしたが、
2022年9月に東京地裁は請求を棄却した。

 こうした状況を受け、家事使用人が労働基準法から適用除外とされていることで
発生する課題をあきらかにするため、独立行政法人労働政策研究・研修機構が
2023年9月に公表したアンケート調査では、業務内容や就業時間などが
不明確であるため契約をめぐるトラブルが発生していたり、
2001年から労災保険の特別加入が認められているにもかかわらず
制度の認知度の低さから、就業中のケガに対する補償が十分ではないなどの
問題が一部で発生していることが分かった。

 このように家事使用人にとって働きやすい環境の整備が必要となってきている
情勢を受け、厚生労働省は2月8日に
「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定し、
家事使用人の労働契約の条件の明確化・適正化、適正な就業環境の確保などについて
必要な事項を示すこととなった。

 ガイドラインでは、労働条件の明確化、雇用主の情報、就業場所、
労働契約の期間、試用期間、業務の内容、就業時間、休憩時間、報酬等、
退職に関する事項、休日・休暇といった条件について明確にすること。
また、口頭だけでなく、書面もしくは電子メールなどで明示することを求めている。

 さらに労働契約の条件の適正化として、雇用主が、報酬や就業時間、
労働契約の期間などを適正な水準に設定することを求めている。
例えば、報酬については、仕事の難易度や家事使用人の能力などを考慮し、
最低賃金を下回るような低い水準となっていないかを確認し、
家事使用人と話し合った上で、適切な水準となるようにすることなどをあげる。

 適正な就業環境の確保としては、家事使用人の就業日ごとの
始業・終業時刻を確認して、記録し、お互いに確かめ、就業時間を適正に
管理することなどを求めている。

 さらに、保険の加入状況の確認として、
(1)損害保険加入の有無、
(2)災害補償保険(労災保険の特別加入を含む)加入の有無を
 事前に確認しておくことなどをあげている。   (荻野 登)



★☆★編集後記★☆★

 先月27日、厚生労働省は2023年の出生数(速報値)を発表しました。
前年比5.14%減の75万8631人(外国人含む)で8年連続の減少となり過去最少です。
出生数の低下要因の一つにコロナ禍の影響も考えられるとのことです。

 政府は少子化対策の財源に医療保険料と合わせて集める支援金制度で、
「1人あたり月500円弱」と説明しています。
会社員の場合は、給与から天引きされる医療保険料と合わせて
徴収されるようです。
「月500円弱」の金額は粗い試算とのことですが、
一日も早く金額と徴収方法を明確にして欲しいです。

 厚生労働省は、失業手当を受けるときの手続きをオンライン化します。
失業給付受給にはハローワークで4週に1度の面談を受ける必要があります。
2024年度中にウェブ会議システムで代替を認めるため、
全国ハローワークのうち9カ所で試験運転をしています。

季節の変わり目で寒暖差が激しいです。
くれぐれも体調管理にはお気をつけください。 (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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