フリーランス新法が施行
~求められる契約関係の取引適正化、両立支援の配慮義務とハラスメント防止措置~
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★雇用システム研究所メールマガジン★
< 第271号 2024/11/01 >
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急に肌寒くなってきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第271号をお送りします。
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□目次 INDEX‥‥‥‥‥
フリーランス新法が施行
~求められる契約関係の取引適正化、両立支援の配慮義務とハラスメント防止措置
■フリーランスの苦情・相談が増加。「報酬の支払い」が最多
■契約条件の明示義務化。口約束は違法
■帰責事由のない返品、買いたたき等、7つの禁止事項
■妊娠、出産、育児・介護への配慮義務
■違反に対しては50万円以下の刑事罰
(以上執筆者 溝上 憲文)
■フリーランス法知らない「フリーランス」76.3%、「事業者」54.5%
■連合が賃上げ要求「5%以上」、格差是正に向け中小労組は「6%以上」
■最低賃金1,500円は実現可能なのか?――その影響と課題
(以上執筆者 荻野 登)
編集後記(白石多賀子)
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フリーランス新法が施行
~求められる契約関係の取引適正化、両立支援の配慮義務とハラスメント防止措置
フリーランスの保護を目的とした「フリーランス新法」
(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
が11月1日に施行された。
事業主にとっては下請け法やハラスメントなどの労働法と同様の
措置義務が課されるだけに注意が必要だ。
フリーランス新法(以下、新法)では、フリーランスを
「特定受託事業者」と表現し、
発注事業者を「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」
と表現している。
特定受託事業者とは、個人の場合は業務委託の相手方である
事業者であって従業員を使用しないもの、
法人であれば1人の代表者以外に役員がおらず、
かつ従業員を使用しないものと定義している。
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■フリーランスの苦情・相談が増加。「報酬の支払い」が最多
フリーランス人口は462万人とされている(内閣官房日本経済再生総合事務局調査、2020年)。
また、リクルートワークス研究所の推計によると約320万人(前年比4%増)となっている。
コロナ禍でのテレワークの浸透で増加したといわれており、
さらに企業の副業解禁が広がり、発注事業者と業務委託契約を結ぶ副業フリーランスも
増えているといわれる。
新法制定の背景にはフリーランスの苦情・相談の増加もある。厚労省の委託事業として
弁護士が無料相談を行う「フリーランス・トラブル110番」が2020年11月から開設している。
相談件数は2023年度8986件、24年4月から8月までに4593件と毎月平均900件で推移している。
相談内容で最も多いのは「報酬の支払い」(30.8%)、
続いて「契約条件の明示」(14.7%)、
「受注者からの中途解除」(9.9%)、
「発注者からの損害賠償」(8.8%)、
「発注者からの中途解除・不更新」(8.3%)となっている。
新法の規定は大きく契約関係など取引の適正化に関する下請法と同様の規制による保護と、
ハラスメントなど就業関係の整備に関する労働者の類似の保護の2つに分かれる。
所管官庁は前者が公正取引委員会・中小企業庁、後者が厚労省・都道府県労働局となる。
■契約条件の明示義務化。口約束は違法
取引適正化に関する最大のポイントは、
(1)契約条件の明示義務(法3条)、
(2)支払期日の設定と支払義務(4条)、
(3)報酬減額等、買いたたきの禁止(5条)
――の3つである。
発注者はフリーランスに業務委託した場合は直ちに契約条件を書面や電磁的方法で
明示する義務を負う。
これは下請法3条と同じ規制であるが、この義務は発注者がフリーランスであっても適用される。
明示義務には、フリーランスの給付の内容(業務・成果物の内容等)、
報酬の額及び報酬の支払期日のほか、業務委託した日、
フリーランスの給付・役務を受領する期日、給付を受領する場所、報酬をデジタル払い
(報酬の資金移動業者の口座への支払)をする場合に必要な事項などが含まれる。
明示事項は電磁的方法でも可能としており、書面以外のメールやチャット、
SNSでもよいことになっている。
取引条件の明示が義務化されたことで、いわゆる口約束は許されなくなった。
従来は電話1本で発注し、後で言った、言わないといったトラブルや、対面で依頼しても
条件をあいまいにしておくケースもあった。
今後は発注の時点でどういった内容をいくらでいつまでにやるのかという基本的な事項について、
お互いに証拠が残る形にすることが大事になる。
(2)の支払期日の設定と支払義務については、フリーランスに業務委託した場合は、
給付受領日・役務提供日から起算して60日以内に報酬を支払う義務がある。
また、下請法にない規定として、フリーランスに再委託する場合、再委託であること、
元委託支払期日などの一定の情報をフリーランスに明示したときは、
元委託支払期日から起算して30日以内にフリーランスに報酬を支払う義務がある。
■帰責事由のない返品、買いたたき等、7つの禁止事項
(3)報酬減額等、買いたたきの禁止については、下請法とほぼ同じ行為が禁止されている。
具体的には
(1)フリーランスの帰責事由のない給付受領拒絶(役務提供以外)、
(2)フリーランスの帰責事由のない報酬減額、
(3)フリーランスの帰責事由のない返品(役務提供以外)、
(4)通常支払われる対価に比し、著しく低い報酬の額を不当に定めること(買いたたき)、
(5)正当な理由なき物・役務の強制、
(6)フリーランスに経済上の利益を提供させ、その利益を不当に害すること(協賛金などの要請)、
(7)フリーランスの帰責事由なく給付内容を7つの禁止事項がある。
ただし、1カ月以上継続する業務委託に限り適用される
(業務委託した日から業務委託に係る給付受領日・役務提供日まで1カ月以上)。
■妊娠、出産、育児・介護への配慮義務
2つ目の「労働者類似の保護」に関する規定では、
(1)募集情報の的確な表示(12条)、
(2)妊娠、出産、育児・介護に対する配慮(13条)、
(3)ハラスメント行為に関する措置義務(14条)
――などが盛り込まれている。
これは通常の雇用労働者に適用される労働者保護規定を準用したものだ。
妊娠、出産、育児・介護については、フリーランスから申し出があれば、
両立して業務に従事できるように配慮が求められる。
例えば妊婦健診の受診のための時間を確保したり、就業時間を短縮したりすることや、
育児・介護等の時間の確保のため、育児・介護等と両立可能な就業日、
時間とするといった配慮が求められることになる。
ただし、6カ月以上の継続的業務委託の場合は義務であるが、
単発の取引や6カ月未満の業務委託は努力義務とされている。
ハラスメント行為に関しては、
例えば「性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(法人の代表の場合は当該法人)
に係る業務委託の条件について不利益を与え、
又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害することがないよう、
その者からの相談に応じて適切に対応するための体制整備等の必要な措置を講じなければならない」
とされている。
こうした取るべき措置は現行のセクハラ・パワハラ・マタハラ指針が求める措置が適用される。
これらは単発・短期の一時的な業務委託に限らずすべての業務委託に適用される。
また、発注者は申し出を理由に取引停止などの不利益な取り扱いをしてはいけない。
■違反に対しては50万円以下の刑事罰
フリーランスは新法の違反事実がある場合、行政機関に申告を行うことができる。
取引適正化に関しては公正取引委員会と中小企業庁に申告する。
雇用類似の保護の関しては厚労省本省と都道府県労働局に申告する。
行政機関は、発注者に助言指導、勧告を経て、勧告に従う命令を下すことができる。
この命令に違反したときや虚偽報告・検査報告などがあったときは、
50万円以下の罰金に処する刑事罰を科すことができる。
刑事罰には両罰規定と呼ばれる規定があり、行為者である企業の現場責任者や人事担当役員、
法人自体も責任を負う可能性もある。
事業者は、セクハラ・パワハラ・マタハラ指針などについては、
従業員に対して実施している措置をフリーランスに拡張して適用することが求められる。
さらにフリーランスとの契約関係については法に則って適切なのか、
改めて確認し、整備する必要があるだろう。 (溝上 憲文)
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■フリーランス法知らない「フリーランス」76.3%、「事業者」54.5%
フリーランスとの取り引きの適正化を図ための新しい法律
「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が11月1日に施行されたが、
その周知は進んでいない。
就業形態の多様化やIT 化の進展、プラットフォームエコノミー
(フードデリバリー、クラウドソーシング等)の拡大によって、内閣府の調査(2020年)
によるとフリーランスで働く人は462万人にのぼると試算されている。
同法は、こうした動向を受けてフリーランスが安心して働ける環境を整備するため、
(1)フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化、
(2)フリーランスの就業環境の整備を図る
――ことを目的としている。
法律の適用対象は、発注事業者からフリーランスへの「業務委託」(事業者間取引)。
フリーランスは業務委託の相手方である事業者で従業員を使用しないもの、
発注事業者はフリーランスに業務委託する事業者で従業員を使用するものをさす。
このため、個人間の取引は対象外で、BtoB(事業者間取引)に限定される。
発注事業者が満たす要件に応じてフリーランスに対しての義務の内容が異なるが、
取引条件については、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示することが義務となる。
具体的には「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「発注事業者・フリーランスの名称」
「業務委託をした日」「給付を受領/役務提供を受ける日」「給付を受領/役務提供を受ける場所」
「(検査を行う場合)検査完了日」
「(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項」
を明示しなければならない。
しかし、公正取引委員会と厚生労働省が今年5~6月に実施した調査
(フリーランス780人、1000の事業者が回答)によると、「新法の内容を知らない」
という回答はフリーランスで76.3%、事業者側で54.5%にのぼるなど、
過半数が新法の内容を知らない状態だ。
法律の内容を知らない回答割合が高い業種は、事業者では「建設業」(80.2%)、
「医療、福祉」(77.4%)、「農業・林業」(69.7%)の順、
フリーランスでも「医療、福祉」(96.6%)、「建設業」(90.9%)での認知度が低く、
「学術研究、専門・技術サービス」(80.6%)が続く。
すべての事業者に義務化されている取引条件の明示でも、
条件を明示しなかったことがあるとの回答割合は、事業者で17.4%、
フリーランスで44.6%。いずれも「建設業」が最も多く、
「生活関連サービス業、娯楽業」が続く。
また、フリーランスの6割以上が報酬について十分に協議が行われなかった
などと回答している。
さらに新法で委託事業者に求められるハラスメント対策について、
「相談窓口などが設置されていなかった」「設置されていた契約のほうが少なかった」
という回答は8割超になるなど、新たな法律で違反となり得る行為が、
依然として横行している。
調査に寄せられたフリーランスからの声として、
「契約書を発行する雰囲気もない」 (俳優、女優、モデル)、
「事前に契約書を作成するのはまれで多くは口約束」(映像・画像・音楽制作、編集)、
「契約書を交わすことが終了時に来るので意味がない」(カメラマン)など、
旧来からの慣行を脱してない取引現場の実情が浮かび上がる。
公正取引委員会は問題事例の多い業種の集中調査を今年度中に行うとしているが、
新法の周知にはまだ時間を要しそうだ。
一方、厚労省もフリーランスの中には、実態としては労働基準法上の労働者に
該当するような働き方をしているにもかかわらず、
名目上は自営業者として扱われる問題が指摘されていることから、
全国の労働基準監督署に、労働基準法等の違反に関する相談窓口を設置する。
■連合が賃上げ要求「5%以上」、格差是正に向け中小労組は「6%以上」
連合は10月18日に開いた中央執行委員会で、2025春季生活闘争に向けて
賃上げ要求の目安を「5%以上」とすることなどを柱とする闘争方針の
「基本構想」を確認した。
2024年闘争で規模間の格差が拡大したことを踏まえて、中小労組はこの目標値に
格差是正分1%以上を加えた6%以上(1万8,000円以上)を目安として
積極的に取り組むよう求めている。
2024闘争では賃上げが連合平均で5.1%となり、33年ぶりの5%台乗せが実現した。
しかし、基本構想では「生活が向上したと実感している人は少数にとどまり、
個人消費は低迷している」と現状を分析。その背景として
「物価高が勤労者家計を圧迫してきたことに加えて、中小企業や適切な価格転嫁・適正取引が
進んでいない産業などで働く多くの仲間にこの流れが十分に波及していないこと」
を要因としてあげる。
連合としては2022春季生活闘争からスタートした「未来づくり春闘」から、
2023闘争では30年ぶりの3%超の賃上げによって「転換点」を形成し、
2024闘争では「ステージ転換」に向けた大きな一歩を踏み出した過去3年の経過を重視。
2025闘争ではこうした流れを踏まえて、
「四半世紀に及ぶ慢性デフレに終止符を打ち、動き始めた賃金、経済、
物価を安定した巡航軌道に乗せる年としなければならない」とその意義を強調する。
そのため、基本構想では
「『賃金も物価も上がらない』という社会的規範(ノルム)を変えるのは今である」と主張。
「ノルムを変えることで日本経済の体温を欧米並みに温め、実質賃金が継続的に
上昇することで個人消費を拡大し、賃金と物価の好循環を実現する必要がある」とし、
経済社会の新たなステージを定着させるため、
「全力で賃上げに取り組み、社会全体への波及をめざす」。
そのカギとなるのが、「賃上げの広がりと格差是正」に加え、
「適切な価格転嫁・適正取引の徹底、製品・サービスと労働の価値を高め認め合う取引慣行の醸成」
と強調する。
基本構想は取り組みに当たって、国際的に見劣りする日本の賃金水準を中期的に
引き上げていくことの重要性をあげる。
過去3年間、名目賃金は伸びたものの、物価高によって実質賃金は低下し、
日本の賃金の相対的位置も低いままとなっている。主要国の賃金が
年1~2%ずつ上昇していることから、基本構想は、
「日本の実質賃金をわが国全体の生産性の伸びに応じて継続的に引き上げ、
中期的には生産性自体を引き上げることで改善のスピードアップをはかる必要がある」
と主張。
そのため、「2025年は日本の実質賃金を少なくとも 1%程度改善し、
賃金における国際的ポジション回復をめざす必要がある」との目標値を示した。
そのうえで、すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点に加え、
各産業・企業での「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点から、
これまでと同様に賃金要求指標パッケージをまとめている。
「底上げ」に当たっては、「全体の賃上げの目安は、賃上げ分3%以上、
定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上とし、その実現をめざす」
「中小労組などは格差是正分を積極的に要求する」とした。
「5%以上」の目安は、昨年と同様ながら、「その実現をめざす」との表現に、
昨年以上の要求と獲得に向けた構成組織の奮起に期待している。
規模間・雇用形態間の格差是正に向けた方針として、
中小組合に格差是正分を積極的に要求するよう要請。
すべての中小組合は、賃金カーブ維持相当分を確保した上で、
賃金実態が把握できないなどの事情がある場合は、賃金指標パッケージの
目標値に格差是正分に1%以上を加えた6%以上・1万8,000円以上を要求の目安とした。
雇用形態間の格差是正に向けて、2024年度地域別最低賃金は5.1%と
連合結成以来最大の引き上げとなったことから、既存者の賃金についても、
この引き上げ率を上回る賃金引上げに取り組む。
有期・短時間・契約等で働く者の賃金を「働きの価値に見合った水準」
に引き上げていくため、賃上げ・昇給等によって、
経験5年相当で時給1,400円以上をめざすとの新たな数値目標も示した。
「底支え」としては、企業内のすべての労働者を対象に企業内最低賃金の
協定を締結することに取り組み、締結水準は、生活を賄う観点と初職に
就く際の観点を重視し、前年より50円増の「時給1,250円以上をめざす」とした。
なお、全労連などでつくる国民春闘共闘委員会
(代表幹事・秋山正臣全労連議長)は10月18日に年次総会を開き、
2025年春闘方針構想を確認。賃上げ要求基準は、前年の要求より月額で
2,000円、時給で10円増の「月額3万2,000円(10%以上)、
時給200円以上」を提起した。
■最低賃金1,500円は実現可能なのか?――その影響と課題
10月27日に投開票が行われた第50回衆議院選挙の結果、
自民・公明をあわせた与党で過半数に届かず、政治情勢は先行き不透明感が強まっている。
こうしたなか、選挙公約で注目を集めたのが、
最低賃金の引き上げ目標として各党が「1,500円」を掲げたこと。
自民党は「2020年代に全国平均1,500円」、
公明党も「5年以内に全国平均1,500円」、
さらに躍進した立憲民主党も「1,500円以上」、
共産党、れいわ新選組、社民党は「全国一律1,500円以上」とそろい踏み。
議席数を急伸させた国民民主党は
「全国どこでも1,150円以上を早期に実現」としていた。
こうした各党の公約に関して、経団連の十倉雅和会長は10月22日の記者会見で、
岸田政権で打ち出した「2030年代の半ばに最低賃金1,500円達成」
という共通認識がある中で、「2020年代に達成しようと思えば、
毎年平均で7%の引き上げ、3年でやろうと思えば15%ほどにのぼる。
できるだけ上げていこうという取り組みは大事だが、
あまり乱暴な議論はすべきでないし、ふさわしくない」と苦言を呈した。
今年の地域別最低賃金は全国加重平均で前年51円増の1,050円と大幅に伸びたが、
そのアップ率は5.1%にとどまっている。
一方、経済同友会の新浪剛史代表幹事は同18日の会見で、
「少なくとも2020年代には実現してもらいたい。
できない企業は退出すべきだ」と述べるなど、経済界も一枚岩ではない。
新浪氏の発言の背景には、日本の最低賃金の水準が国際比較でみても
低位にあることがある。
購買力平価で実質化した最低賃金額を比較すると、
2022年に8.5ドルまで上昇したが、欧州諸国や韓国より低い水準にあるのが実情だ。
さらに、正社員との差が大きいことも日本の特徴。
一般労働者の賃金に対する最賃の比率は47.8%程度で、
国際的に相対的貧困ラインとされる賃金の平均値や中央値の5~6割を下回っている。
EUでは2022年に発令した最低賃金に関する指令で、
「中央値の 60%」と「平均値の 50%」を国際的に共通して用いられる指標となる基準値とし、
最低賃金を定めている各国の適正水準への引き上げを促している。
これを念頭に連合12年程度で中位数の6割水準まで引き上げることを
めざす方針をまとめている(2035年ごろに1,600 円~1,900 円程度となる)。
最低賃金の伸びは日本の場合、高卒初任給を引き上げる誘因にもなる。
労働組合では、先の連合の記事にあるように、
企業内最低賃金の協定化を推進する取り組みに力点を置いている。
協定化の考え方のベースには企業内に働く正規・非正規を問わない横断的な水準として、
18歳・高卒初任給見合いでの時給を設定しているところが多い。
しかし、ここ数年の最賃の急伸の結果、初任給の時給換算の水準に迫り、
最賃トップの東京都などでは最低賃金の方が、
企業内最賃協定の時給換算額を上回るケースも出てきている。
もともと高卒初任給を業者間協定で企業横断的な最低ラインとしてスタートした
日本の最低賃金制度だが、皮肉にも最近の法定最賃の急伸が高卒初任給の
引上げを促しているともいえる。
初任給の引上げは正社員の賃金体系に影響を及ぼすことにもなる。
若年層への配分増による人件費配分のひずみが中堅層の賃金水準の停滞を
引き起こしかねない副作用を生む。
因果関係はまだ解明できていないが、令和5年の賃金センサスのデータでは、
相対的に34歳以下の若年層で高い伸びとなっているものの、
35~40代にかけての賃金の伸びは停滞している。
選挙戦では「1,500円」という数字だけが躍ったが、
生産性の向上を伴わない賃上げは企業の体力を確実に奪う。
さらに最賃の引き上げとともに常に課題となる「年収の壁」。
所得税の非課税限度額を超える「103万円の壁」、
さらに配偶者の健康保険や厚生年金から外れる「130万円の壁」の
近傍で就業調整する働き方が拡大すれば、人手不足に拍車をかける結果となる。
「1,500円」に向けては、こうした課題を踏まえた総合的な政策の検討に加え、
政府と労使が合意できるロードマップの作成が欠かせない。 (荻野 登)
★☆★編集後記★☆★
米イリノイ大学などのチームによる「人生100年時代」について発表がありました。
日本を含む長寿国では、この30年で平均寿命の延びが鈍化しており、
今世紀中に100歳まで生きる人の割合が女性で15%、
男性で5%を超えることはないと予測しました。
先月4日、東京都議会で顧客による著しい迷惑行為
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防ぐ条例が成立しました。
全国で初めてです。
カスハラの禁止には罰則はありませんが、東京都は就業者の保護につながる
具体策などを示すガイドラインを年内に公表し2025年4月に施行します。
秋の長雨、気温の較差があります。
くれぐれも体調管理にはお気をつけください。 (白石)
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