経済界・労働界が「第3号被保険者制度」の将来的な廃止を提言
~注目される年金改正法案の国会での議論~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★雇用システム研究所メールマガジン★
< 第274号 2025/02/01 >
http://www.koyousystem.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
余寒厳しき折ではございますが、いかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第274号をお送りします。
───────────────────
□目次 INDEX‥‥‥‥‥
経済界・労働界が「第3号被保険者制度」の将来的な廃止を提言
~注目される年金改正法案の国会での議論~
■第3号被保険者、1995年の1220万人から676万人に減少
■経済同友会は「人手不足」と「女性の低年金化」を理由に廃止を提言
■連合は10年程度の移行期間の後に完全廃止
■年金改正法案審議で「将来的な廃止の検討」を求める
(以上執筆者 溝上 憲文)
■2025春闘が事実上のスタート――経団連・連合は価格転嫁に向けた方向性は一致
■経済3団体が価格転嫁の共同要請を公表――社会全体での定着に向け
■政府は下請法の改正で価格転嫁・取引適正を後押し
(以上執筆者 荻野 登)
集後記(白石多賀子)
==============================================
経済界・労働界が「第3号被保険者制度」の将来的な廃止を提言
~注目される年金改正法案の国会での議論~
就業調整を発生させる「130万円の壁」である「第3号被保険者制度」
について連合や経済同友会など労使の団体が相次いで廃止に向けた提言を発表している。
==============================================
■第3号被保険者、1995年の1220万人から676万人に減少
第3号被保険者制度は1985年の年金制度改正で導入されたが、
それ以前は会社員の妻も任意で年金保険料を払って国民年金に加入していた。
当時は約7割の主婦が国民年金に加入していたが、残りの3割は加入しておらず、
将来、無年金状態になることが危惧された。
そのため当時の政府は約7割の国民年金加入者も含めて全員の保険料負担を
免除する第3号被保険者制度を導入したという経緯がある。
2004年の年金制度改正では、第3号被保険者については、
第2号被保険者の負担した保険料は夫婦で共同負担したものとする規定が設けられた。
しかし第1号被保険者の妻と異なり、保険料を負担することなく、
基礎年金を受給できる第3号被保険者は、負担と受益を原理とする社会保険と位置づける以上、
保険料の負担を求めないことは不公平、不合理であるとの批判もあった。
しかも1985年以降、第3号被保険者を取り巻く環境も大きく変わっている。
女性の労働参加が進展し、専業主婦世帯の減少により、共働き世帯が増加している。
加えて非正規雇用労働者の増加に伴い、「130万円の壁」という就業調整が
社会的問題となっている。
第3号被保険者の数は1995年の1220万人をピークに減り続け、
2024年は約676万人に減少している。
しかも女性の割合が圧倒的に多い。
3号被保険者の就労状況について日本商工会議所は735万人(2022年)のうち、
パート主婦などの短時間労働者が312万人。
手取り収入の減少を避けるため「年収の壁」を意識して働いていると想定される
月7.8万円~10.8万円の層は約147万人と推計している。
これまで経団連が「第3号被保険者制度の在り方を検討、
再構築することが望ましい」と表明。
関西経済連合会(関経連)、日本商工会議所、経済同友会が廃止に向けた提言を発表している。
経済団体だけではなく、連合も2024年10月18日の中央執行委員会で
「働き方などに中立的な社会保険制度
(全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)
に対する連合の考え方」を確認している。
日本商工会議所と東京商工会議所は2024年11月21日に発表した
「年金制度改革に関する提言」の中で「第3号被保険者制度の解消に向けた検討」を掲げ、
第3号被保険者制度は「性別や婚姻の有無にかかわらず、
男女ともに働いて収入を得ることが一般化したという環境変化を受け、
同制度が果たしてきた役割は、終焉が見通せる状況になりつつある」と述べる。
その上で「『年収の壁』問題の根底にある第3号被保険者制度の将来的(10年~20年後など)
な解消について、早急に国民の合意を得る努力をすべきである」と強調している。
一方で働ける環境にない人の実状には配慮すべきとも述べている。
■経済同友会は「人手不足」と「女性の低年金化」を理由に廃止を提言
経済同友会は2024年12月2日に「現役世代の働く意欲を高め、
将来の安心に備える年金制度の構築~多様性を包摂し公平・中立・簡素な制度~」を提言。
「年金制度のみならず、医療・介護制度、税制においても、
従来のサラリーマン・専業主婦世帯モデルの発想から、共働き・単身世帯モデルの
『子育て支援』を注視した制度設計への転換が必要である」と指摘。
第1段階の改革として「第3号被保険者制度の廃止」、第2段階として
「税と社会保障の一体改革に向けた基礎年金改革の検討」を掲げ、
改革の内容や3号被保険者の1号・2号被保険者制度への移行方法など
具体的プロセスも提起している。
廃止の理由について経済同友会事務局の担当者は
「同友会は百貨店やスーパーなどサービス業の経営者も多いが、
年末の繁忙期に年収の壁によってシフトに入れないなど人手不足が
深刻だという問題意識も非常に強い。
もう1つは女性の低年金化だ。
基礎年金が減少していく中で今は良くても老後に後悔する人も多く、
報酬比例年金がプラスされれば老後が少しでも豊かになる。
加えて専業主婦と会社員という社会保障などに関する昭和モデルから脱却し、
共働き・単身世帯といった家族形態の多様化や働く意欲のある人の支援
といった令和時代に合った制度に転換していくべきと考えている」と語る。
改革の内容は、
(1)まず3号被保険者制度の廃止の時期を明示する、
(2)その上で完全廃止までに5年の猶予期間を設け、
初年度から3号被保険者への新たな加入・適用を行わない。
その間に適用拡大の推進や現行の「年収の壁・支援パッケージ」を活用しやすく改善し、
期間を延長した上で2号被保険者への移行を促し、
5年経過後に3号被保険者の数を極力少なくしていくシナリオを描いている。
「厚労省は適用拡大を全面的に進めても2030年には460万人の3号被保険者が残ると推計している。
ダブルワークなど複数事業所勤務者についてはマイナンバーの活用による
収入の補足を通じて2号被保険者への移行を促進し、
企業側も年収の壁となっている配偶者手当を扶養手当に変更し、
配偶者手当を廃止するなどあらゆる対策を並行して進めて3号被保険者を縮小し、
5年経過後はすべてが2号ないし1号被保険者に移行することを考えている」(担当者)と語る。
併せて移行時の世帯年収が一定金額未満で、
障がいなどの就労困難な人には保険料の減免措置を設けることを提案している。
また、同友会はこれまで第2号被保険者全体で負担していた
第3号被保険者にかかる保険料部分を削減するとしている。
同友会の試算によると、標準報酬月額30万円の負担は今の6%程度、
20万円は9%程度減少するという。
18.3%(労使折半)の1割弱に相当する。
■連合は10年程度の移行期間の後に完全廃止
連合は廃止のプロセスは、まず将来的な廃止を明示し、
2号被保険者への適用拡大を進めつつ、廃止スタートから10年程度の移行期間を設けて完全廃止する。
具体的には
(1)新たに3号被保険者となることはできない、
(2)最初の5年程度の期間で3号被保険者の配偶者に「年収850万円未満」
または「所得が655万5000円未満」(遺族厚生年金の受給要件と同じ)
の所得制限を設け、要件を満たさない人は1号被保険者となる、
(3)次の5年程度の期間に(2)の要件に加え、3号被保険者本人に子ども
(18歳の誕生日の属する年度末まで、または20歳未満で1級または2級の障害の状態
にある婚姻していない子どもに限る)を養育する親である」との要件を設ける
――としている。
移行期間などは異なるが連合と経済同友会の廃止に向けた骨格は似ている。
そして両者は廃止後の基礎年金改革案も提示し、
第3号被保険者制度の廃止後は新たな国庫負担による基礎年金(連合は最低保障年金)
の創設を求めている。
経済同友会は廃止後の第2段階として、税を財源とする最低限度の生活水準を
保障する基礎年金制度の構築と保険料を財源とするする報酬比例年金を明確に区分けし、
シンプルな2階建て構造に見直すことを提案する。
具体的には国民年金保険料、厚生年金保険料の基礎年金拠出部分の徴収を段階的に引き下げ、
最終的に廃止し、同時に基礎年金を現行の税負担割合(1/2)を段階的に引き上げ、
全額税による制度に移行する。
同友会は基礎年金を税方式にすると、現行18.3%の保険料率が5ポイント程度減少する
と試算している。
課題となる税財源については消費税だけではなく、
金融所得課税の強化や資産課税の強化などを提案している。
一方、連合は自営業者等の所得捕捉の仕組み、
国庫負担割合の引き上げによる全国民共通の「所得比例年金・最低保障年金制度」の
構築を目指すとしている。
連合の芳野友子会長と経済同友会の新浪剛史会長は昨年12月の懇談会で
第3号被保険者制度の廃止に向けて連携していくことで合意している。
■年金改正法案審議で「将来的な廃止の検討」を求める
昨年末に示された年金改革に向けた厚生労働省の報告書
(社会保障審議会年金部会における議論の整理)では、
第3号被保険者制度のあり方についても議論された。
将来的な見直しの方向性を明示すべきとの意見や将来的には
廃止すべきなどの意見があったが
「次期改正における制度のあり方の見直しや将来的な見直しの方向性については、
意見がまとまらなかった」(議論の整理)とし、
今年の年金改正法案には第3号被保険者制度の廃止は盛り込まれない方向だ。
ただし、「本部会としては、第3号被保険者制度を巡る論点についての
国民的な議論の場が必要であるとの認識を共有した。
政府に対して、適用拡大を進めることにより、
第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを着実に進めるとともに、
第3号被保険者の実態も精緻に分析しながら、引き続き検討することを求める」
としている。
今後は通常国会に提出される年金改正法での議論が焦点になる。
連合や経済同友会としては「将来的な廃止の検討を法附則に盛り込む」ことを期待している。
国会での議論は予算関連法案審議以降の3月上旬との見方もある。 (溝上 憲文)
==============================================
==============================================
■2025春闘が事実上のスタート――経団連・連合は価格転嫁に向けた方向性は一致
経団連と連合のトップが1月22日、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催し、
今年の春闘が事実上スタートした。
今季交渉に向けた労使の基本スタンス・方向性に大きな差はなく、
中小企業や非正規雇用に賃上げのトレンドがどこまで拡大するかが焦点となる。
懇談会の冒頭、経団連の十倉雅和会長は、
「今年は、ここ2年間で醸成されてきた賃金引き上げの強いモメンタムを
『定着』させる年にしなければならない」と強調したうえで、
会員企業に対して、
「ベースアップを念頭に置いた検討を呼びかけるなど、全力で取り組んでいく」
と述べ、昨年に引き続き賃上げに前向きな姿勢を示した。
今年の課題については、「何より、賃金引き上げの『定着』には、
約7割の働き手を雇用する中小企業と、4割近くを占める有期雇用等労働者の
賃金引き上げが不可欠である」と述べ、賃上げのすそ野の拡大が必要だとの認識を示した。
一方、連合の芳野友子会長は昨年、33年ぶりに5%以上の賃上げが実現したことを受け、
「賃金も物価も経済も安定的に上昇する経済社会へのステージ転換がはかられた」と表明。
そのうえで、今季の課題について「昨年の春季生活闘争で経済社会のステージ転換を
果たしたとするならば、今年は、その新たなステージを定着させる年である。
そのためには、賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せることを労使で
努力していく春季生活闘争にしていきたい」と述べるなど、
労使とも賃上げの「定着」を今季交渉のキーワードとしている。
また、日本経済全体の底上げをはかるためには、
労務費を含む適切な価格転嫁の実現することが不可欠であることから、
経団連のリーダーシップを要望した。
続く懇談会で、連合からは「価格転嫁の必要性」「適正取引の必要性」、
一方、経団連からは「価格転嫁交渉力の強化」
「価格転嫁に対する消費者の意識や行動変容」についての見解が示された。
まとめのあいさつで芳野会長は、「本日の意見交換を通じて、
労使が同じ方向を向いていることを再認識した」と評価。
「消費者のマインドの変革に向け、製品には適正な価格があるということも連合として発信していきたい」
と述べていることなどから、
意見交換を通じて価格転嫁・適正取引の必要性についての労使団体の認識は一致したとみることができる。
十倉会長も、「政府に環境整備は求めるものの、良い労使関係を基盤に、
経団連と連合が同じ方向を向いて、そうした課題の解決に向け
『共闘』していきたい」と述べるなど、
エールを送った。連合が今季交渉で方針に掲げた中小労組の格差是正に向けた要求(6%以上)には、
水準が高すぎるとの異論は出ているものの、
それ以外の方向性は共有するという、異例の形で春闘がスタートした。
経団連が1月21日に公表した今季交渉・協議に向けた経営側のガイドラインとなる
2025年版『経営労働政策特別委員会報告』(経労委報告)ではとくに、
「人への投資」促進の実現には働き手と労働組合の協力が不可欠であることから、
明るい未来を共につくり上げる「未来協創型」労使関係を構築・確立することの重要性を説いている。
今季交渉に向けたスタンスとしては、物価上昇や人材確保への対応を契機として
「劇的に変わったここ2年間の賃金引き上げの力強いモメンタムを『定着』させ、
『分厚い中間層』の形成と『構造的な賃金引き上げ』の実現に貢献することが
経団連・企業の社会的責務である」「月例賃金の引き上げでは、
働き手の実質的な生活水準の維持と企業における人材の確保・定着の観点から、
『賃金・処遇決定の大原則』に基づき、制度昇給(定期昇給等)の実施はもとより、
ベースアップを念頭に置いた検討が望まれる」などと主張している。
同報告の発表を受け、連合は清水秀行事務局長談話のなかで、
「2025春季生活闘争の歴史的な意味について基本的に共通していること」
「賃上げは『人への投資』と明確に方針化したこと」を評価。そのうえで、
「人への投資」を起点として、
「ステージを変え、経済の好循環を力強く回していくことをめざしており、
当面の安定した巡航軌道のイメージとも基本的に重なるところが多い」
「わが国社会の明るい未来と働く人・生活者の幸せを実現したいという
目的に違いは見当たらない」との見解を示した。
ここでも経営側の主張に異論はないという異例のコメントとなっている。
■経済3団体が価格転嫁の共同要請を公表――社会全体での定着に向け
経団連、日本商工会議所(小林健会頭)、経済同友会(新浪剛史代表幹事)の
経済3団体は1月16日、3団体の長の連名で、社会全体における
「価格転嫁の商習慣」の定着に向けてと題する共同要請を公表した。
副題は「構造的な賃上げによる成長型経済の実現へ」。
中小企業の構造的な賃上げと生産性向上に向けて、
適正な価格転嫁の推進を通じた大企業と中小企業の共存共栄関係の再構築を目指すのが目的。
そのため、会員企業、とくにサプライチェーン上位に位置する大企業、
中堅企業、発注者でもある中小企業等に対して、
「パートナーシップ構築宣言」の趣旨の徹底と実行を強力に進めるとともに、
未宣言企業に対して宣言への参画を呼びかけている。
3団体の要請文では、わが国経済が「物価と賃金の好循環」による
成長型経済へと移行してきているとしたうえで、
構造的な賃上げや投資拡大を「実行していく主体は、我々民間、経済界である」
と表明。
この流れを地域経済の好循環に結び付けるためには、
全従業員数の約7割を雇用する中小企業が
「『自己変革』を通じた生産性向上の果実を賃金に繋げるとともに、
適正な価格転嫁を通じて賃上げ原資を安定的に確保できるかが鍵となる」と強調している。
3団体は「パートナーシップ構築宣言」の推進に向けて、2年連続で共同要請を発出しており、
宣言企業数は5割以上増加しているが、
昨年の中小企業庁調査によるとコスト転嫁率は約50%と「道半ば」。
重層的なサプライチェーンの下流に位置する中小事業者には、
コスト転嫁の恩恵が十分に届いていない状況が明らかになったことから、
BtoB取引での「パートナーシップ構築宣言」の実効性確保に加えて、
「BtoC取引では、消費者に対して『良いモノやサービスには値が付く』
という価値観を浸透させ、デフレマインドを払拭し、
価格転嫁を社会全体で受け入れる商習慣の確立に向けて、
官民挙げて推進していくことが急務である」と呼びかけている。
主な要請内容は以下の通り。
1.経営者自らが先頭に立った、取引適正化への取り組み強化
・「パートナーシップ構築宣言」を積極的に宣言・公表し、
取引適正化の徹底を図る
・直接の取引先を通じて、その先の取引先へ働きかけることで、
宣言の実効性確保と社会全体への浸透を図る。
・内閣官房と公正取引委員会による
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」
に沿う行為を徹底し、社内外に方針を示す
2.労務費、エネルギーコスト、原材料費の価格転嫁の推進
・発注者および受注者は、最低賃金上昇率等の公表資料を基に
価格交渉を行い、サプライチェーン全体で価格転嫁を推進する
・サプライチェーン上位の大企業は受注者の要請に向き合い、
受注者も価格交渉力を高める
3.「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値の向上
・規模や系列・業種・地域を超えたパートナー企業との連携を促進し、
発注者と受注者双方の付加価値の拡大を目指す
・中小企業単体では対応が困難な課題解決にサプライチェーン全体で挑戦し、
優良な取引慣行について体系的な改善サイクルを確立する
・政府は国民に対し、「良いモノやサービスには値が付く」
ことの理解に向けた啓発を行う
■政府は下請法の改正で価格転嫁・取引適正を後押し
政府もサプライチェーン(供給網)全体での適切な商取引を進め、
中小企業の賃上げにつなげるための取り組みとして、
通常国会で下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正案の提出を目指している。
「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を目標とする石破政権にとって、
持続的・構造的賃上げに向けた価格転嫁等の取引適正化の推進が経済政策の
一丁目一番地の位置づけになってきている。
1月16日に開いた関係閣僚や中小企業の経営者が参加した会合で石破首相は、
「改正法案はなるべく早く国会に提出し、価格転嫁や取引適正をさらに徹底したい」と述べた。
下請法の見直しに向けては、法改正の内容を検討してきた
「企業取引研究会」が昨年12月25日に報告書を公表した。
同研究会では、近年の物価上昇を受けて、
適切な価格転嫁をサプライチェーン全体で定着させ取引環境を整備するという観点から、
下請法を中心として優越的地位の濫用規制の在り方の検討が行われ、
同報告書には下請法改正の主な方向性が示されている。
それによると、課題として、
「買いたたき」、「約束手形」、「物流」、「『下請』という用語」
――をあげ、具体的な対応策を示している。
買いたたきに係る課題では、コストが上昇している中で、
交渉することなく価格を据え置かれたり、一方的にコスト上昇に見合わない
価格を決められたりして受注企業がしわ寄せを受けていることを指摘する。
現在の下請法の買いたたき規制は、市価の認定が必要なところ、
市価の把握が難しいことから、対等な価格交渉を確保する観点から、
下請事業者からの価格協議の申出に応じなかったり、
親事業者が必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に下請代金を決定して、
下請事業者の利益を不当に害する行為を禁止する規定を新設する。
約束手形に係る課題として、支払手段として手形等を用いることにより、
発注者(親事業者)が受注者(下請事業者)に資金繰りに係る負担を求める
商慣習が続いていることをあげる。
そこで改正法では下請事業者の保護のためには、手形払を認めないこととする。
さらに、電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング等)については、
引き続き支払い手段として許容するが、支払期日までに下請代金に相当する金銭
(手数料等を含む満額)と引き換えることが困難であるものについては禁止する。
物流に係る課題としては、荷主・物流事業者間の問題(荷役・荷待ち)が顕在化しているが、
発荷主から元請運送事業者への委託は、
下請法の対象外(独占禁止法の物流特殊指定で対応)であり、
機動的な対応ができていない点をあげる。
そのため、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引を、
下請法の対象となる新たな類型として追加する。
また、「トラック・物流Gメン」などに通報した場合、
下請法の「報復措置の禁止」の対象となっていないため、
下請事業者が申告しやすい環境を確保すべく、
「報復措置の禁止」の申告先として、現行の公正取引委員会及び中小企業庁長官に加え、
事業所管省庁の主務大臣を追加する。
「下請」という用語に係る課題として、
下請法における「下請」という用語は、発注者(親事業者)と受注者(下請事業者)が
対等な関係ではないという語感を与えるとの指摘がある。
時代の変化に伴い、発注者である大企業の側でも「下請」
という用語は使われなくなっていることもある。
そのため、下請法において、
「親事業者」、「下請事業者」、「下請代金」等の用語を時代の
情勢変化等に合わせた用語に改正する。
下請法の適用基準として、事業規模の大きな事業者であるものの、
少額の資本金で設立されていたり、減資をしたりすることで下請法の親事業者の
対象とならない事例や、取引先に増資を求めることにより下請法の適用を逃れる事例など、
資本金基準のみで対象事業者を画していく制度の問題点が指摘されていた。
このため、報告書では、現行法の資本金基準に加えて、
従業員基準(300人・製造委託等または100人・役務提供委託等)
を軸に検討することが適当であるとしている。 (荻野 登)
★☆★編集後記★☆★
2025年の春闘がスタートしました。
連合は、「中小企業について6%以上とより高い賃上げ」の目標を掲げました。
中小企業事業主は、人材確保や物価高の状況下で賃上げの必要性は理解しています。
賃上げ原資確保するための価格転嫁は難しく、賃上げしても人材確保ができず苦慮しています。
訪日客を含めた観光客の増加により、全国の観光地では宿泊・飲食関連の時給が上昇しており、
北海道ニセコや神奈川県箱根地域では東京都千代田区の時給1428.7円を上回るとのことです
(2024年12月 エン・ジャパン求人サイト「エンゲージ」掲載の平均時給)。
全国で最も時給が高いのは浅草を抱える台東区で1514.5円です。
今春、2月上旬に九州から関東の一部で飛散が開始。
スギ花粉のピークは早いところで2月下旬、
ヒノキ花粉は3月中旬から4月上旬で、例年より多いようです。
早めに対策をしましょう。 (白石)
==============================================
★----------------------------------------------------------
発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp
----------------------------------------------------------★
今月のメールマガジン第274号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容を充実していきたいと思います。
ご感想は info@koyousystem.jp にお願いします。
「こんな記事が読みたい!」というリクエストも、遠慮なくどうぞ。
次回の配信は3月初旬頃情報を送らせて頂きます。
e-mail: info@koyousystem.jp
[過去のメルマガ随時更新]⇒ http://www.koyousystem.jp
==============================================
メールマガジンの配信が不要な方は、お手数ですが、
こちらhttp://www.koyousystem.jp/mail_magazine.html から
配信停止を行って下さい。