改正育児・介護休業法が10月1日から施行
~柔軟な働き方の実現と男性育休の取得を促進~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★雇用システム研究所メールマガジン★
< 第282号 2025/10/01 >
http://www.koyousystem.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
気温の変化を感じます。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第282号をお送りします。
───────────────────
□目次 INDEX‥‥‥‥‥
改正育児・介護休業法が10月1日から施行
~柔軟な働き方の実現と男性育休の取得を促進~
■事業主が選択した2つ以上の措置から1つを選ぶ
■両立に関する事項の意向を個別に確認することを義務化
■男性育休取得率40.5%、5~29人企業は25.1%
■男性の育休取得期間は21.5日、「とるだけ育休」の懸念も
(以上執筆者 溝上 憲文)
■地域別最低賃金66円引上げの1,121円――すべての都道府県で1,000円超へ
■最賃引上げに向けた政府の支援が加速――全国の新聞に全面広告も
■連合が「未来づくり春闘」評価委員会の報告書を公表、6つの提言を示す
(以上執筆者 荻野 登)
編集後記(白石多賀子)
============================================
改正育児・介護休業法が10月1日から施行
~柔軟な働き方の実現と男性育休の取得を促進
改正育児・介護休業法(育介法)が今年4月に続いて
第2弾が10月1日から施行される。
最大の目的は「男女で育児・家事を分担しつつ、育児期の男女が共に
希望に応じてキャリア形成との両立を可能とする仕組みを構築する」ことにある。
つまり、男性の育児参加を念頭に支援策を拡充しようとするものだ。
============================================
■事業主が選択した2つ以上の措置から1つを選ぶ
改正のポイントは大きく、子が3歳になるまでの両立支援の拡充と
子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充の2つだ。
4月施行では、
(1)子の看護等休暇の取得事由を病気・けが、予防接種など以外に感染症に
伴う学級閉鎖や入園(入学)・卒園式も加え、期間も小学校3年生修了まで延長、
(2)残業免除の期間を子が3歳未満から小学校就学前まで延長、
(3)短時間勤務制度(3歳未満)が困難な企業に代替措置としてテレワークを追加
――などの措置が義務づけられた。
そして10月1日の施行では新たな支援策が義務化される。
柔軟な働き方を実現するための措置と個別の周知・意向確認等の2つだ。
柔軟な働き方実現措置は、子が3歳以降小学校就学前の時期に、
事業主が以下の5項目から2つ以上を選択し、従業員は事業主が選択した
措置の中から1つ選べることにした。
具体的には、
(1)始業時刻等の変更(フレックスタイム制、時差出勤)、
(2)テレワーク等(1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できる)、
(3)短時間勤務制度、
(4)保育施設の設置運営等(これに準ずるベビーシッターの手配および費用負担など)、
(5)養育両立支援休暇の付与(1日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できる)
――の5つだ。
(2)と(5)は原則時間単位で取得可能とする必要がある。
企業が短時間勤務制度を選択し、従業員が選べば、小学校就学前まで利用することができる。
またテレワークを選べば短時間勤務による収入減少がなくなるだけではなく、
共働き世帯の場合、交互に取得することで保育園の送迎なども可能になる。
何より女性にとってはキャリアロスを回避できるメリットもある。
■両立に関する事項の意向を個別に確認することを義務化
個別の周知・意向確認義務は、企業が上記で選択した制度について、
従業員に子が3歳の誕生日の1カ月前の1年間
(1歳11カ月に達する日の翌々日から2歳11カ月に達する日の翌日まで)に企業が選択した措置
(2つ以上)の内容を周知しなければならない。
意向確認は面談や書面交付、電子メール等で行うことになっている。
当然ながら利用を控えさせるような個別周知や意向確認は許されない。
もう1つの義務化も重要だ。従業員が本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た時と、
子か3歳になるまでの時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について
意向を個別に聴取することが義務化された。
聴取内容は勤務時間帯(始業および終業時刻)や勤務地、両立支援制度の利用期間などだ。
会社から「どうしますか」と説明を受けることで、育休などの両立支援制度を取得するかどうか
迷っていた男性社員の背中を押す効果もあるだろう。
改正育介法の目的は冒頭に述べたように育児との両立支援だけではなく、
男性の育児参加だ。
周知のように日本の男性の家事関連時間は諸外国でも低レベルにある。
そのため男性の育児参加を促す政策を立て続けに立法化してきた。
その1つが、今年4月の改正育介法による男性の育児休業取得率の公表義務の対象を
常時雇用労働者数1000人超の事業主から300人超の事業主への拡大だ。
また、2022年10月1日には改正育介法により、出生後8週間以内に
最大4週間の利用が可能な「産後パパ育休」制度を創設している。
さらに改正育介法と同時に、改正雇用保険法によって2025年4月に
出生後休業支援給付金と育児時短就業給付が創設された。
出生後休業支援給付金は、子の出生直後の一定期間以内
(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、
被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に最大28日間、
休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)
へと引き上げるものだ。
育児時短就業給付は、被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に給付し、
時短勤務中に支払われた賃金額の10%を給付する。
これも男性が育休を取得しない原因の1つである収入減対策である。
■男性育休取得率40.5%、5~29人企業は25.1%
こうした一連の施策によって徐々に効果も出始めている。
男性育休取得率について、厚生労働省の調査(2024年度雇用均等基本調査結果、7月30日)によると、
2022年10月1日~23年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、
2024年10月1日までに育児休業を開始した者の割合は前回調査の30.1%から
10.4ポイント上昇し、40.5%となった。
調査では男性の育休取得者40.5%のうち産後パパ育休取得者は24.5%と約6割を占めている。
ただし男性の育休取得率が大幅に上昇したといっても企業規模間の差は大きい。
事業所規模別の取得率は、
従業員500人以上の事業所の取得率は53.8%、
100~499人は55.3%となっている。
一方、30~99人は35.8%、5~29人は25.1%と、
99人以下の事業所が平均を下回っている。
また、帝国データバンクの「女性登用に対する企業の意識調査(2025年)」(8月22日公表)
でも男性の育休取得率を調査している。
有効回答企業1万626社のうち中小企業が84.9%を占める。
それによると全体の取得率は20.0%。2023年に実施した前回調査よりも8.6ポイント上昇している。
従業員数別にみると、1000人超が31.7%(前回20.8%)、
301~1000人が32.6%(同16.3%)。
301人以上の企業が大幅に上昇している背景には、
2025年4月から男性の育休取得率の公表対象を301人以上の企業に拡大した影響が大きい。
一方、従業員数が少ない企業ほど取得率が低い。
21~50人が18.6%、6~20人が13.2%、5人以下が10.5%となっている。
特に5人以下は前回の9.3%からわずかしか伸びていない。
■男性の育休取得期間は21.5日、「とるだけ育休」の懸念も
問題は取得率だけではなく、取得日数も重要になる。
2023年度の度雇用均等基本調査によると、1カ月~3カ月未満」が28.0%、
2週間未満は37.7%となっている。
積水ハウスの「男性育休白書2025」(2025年9月19日)によると、
未就学児がいる家庭の男性育休取得率は36.3%(前年34.3%)と前年を少し上回ったが、
取得日数の平均は21.5日(前年36.1日)と前年から約2週間も短くなっている。
その理由として取得率公表義務化の影響で
「少ない日数でも少しでも取得させたいという企業の姿勢が反映されているようだ」
と分析している。
実際に2~3日程度しか取得しない企業もあると聞く。
男性育休取得率が40%台に達しても、取得日数が短ければ「とるだけ育休」に
なってしまう可能性もある。
それでは決して女性の両立支援やキャリア形成に結びつくことはないだろう。
そうした中、三井住友銀行は9月19日、男性社員を対象に1カ月以上の育休の取得を
10月から必須化すると発表した。
また、女性を含め、育休を取得した社員本人と所属部署の同じチームで働くすべての
同僚に1人5万円の「報奨金」の支給も始める。
厚生労働省も令和8年度予算で、男性の育休取得を支援する中小企業向けの
両立支援等助成金の拡充を図ることにしている。
今では男性の育休取得率は女性に限らず男性求職者の企業選びの指標になっている。
企業も人手不足のなかで、女性の採用率や定着率の低さは大きな痛手だ。
重要な戦力として女性のキャリア形成を促すとともに、
育児との両立支援の充実が企業の持続的成長にとっても極めて重要になりつつある。
(溝上 憲文)
==============================================
==============================================
■地域別最低賃金66円引上げの1,121円――すべての都道府県で1,000円超へ
都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した
今年度の地域別最低賃金の改定額が9月4日に出そろった。
引き上げ額は全国加重平均で過去最大の66円で、
すべての都道府県で初めて時給1,000円を超えた。
中央最低審議会が8月4日に示した改定目安の63円を大きく上回るケースも相次ぎ、
改定額で39道府県がそれを上回った。
答申された改定額は、10月1日から翌年の3月31日までの間に順次発効される予定だが、
引き上げ額だけでなく発効日についても、以下のようにばらつきが目立つ結果となった。
47都道府県別に改定状況をみると、目安通りの63円から最高額は82円の引上げと
幅広く分布している。
もっとも高い82円の引上げは熊本県(発効日翌年1月1日)、
次いで81円が大分県(同左)、
以下、80円が秋田県(翌年3月31日)、79円が岩手県(12月1日)、
78円が福島(翌年1月1日)、群馬(翌年3月1日)、長崎(12月1日)、
77円が山形(12月23日)、愛媛(12月1日)、76円が青森県(11月21日)、
74円が佐賀県(11月21日)、73円が鳥取(10月4日)、鹿児島(11月1日)、
71円が島根(11月17日)、高知(12月1日)、宮崎(11月16日)、沖縄(12月1日) 、
70円が石川県(10月8日)、69円が茨城(10月12日)、福井(10月8日)、
66円が徳島(翌年1月1日)、香川(10月18日)、65円が北海道(10月4日)、
宮城(同左)、新潟(10月2日)、奈良(11月16日)、和歌山(11月1日)、
岡山(12月1日)、広島(11月1日)、福岡(11月16日)、64円は栃木(10月1日)、
千葉(10月3日)、富山(10月12日)、山梨(12月1日)、岐阜(10月18日)、
三重(11月21日)、京都(11月21日)、兵庫(10月4日)、山口(10月16日)、
目安通りの63円は埼玉(11月1日)、東京(10月3日)、神奈川(10月4日)、
長野(10月3日)、静岡(11月1日)、愛知(10月18日)、滋賀(10月5日)、
大阪(10月16日)となっている。
最高額(東京都・1,226円)に対する最低額(高知・宮崎・沖縄の1,023円)
の比率は83.4%(昨年度は81.8%)で、同比率は11年連続の改善となり、
地域間格差の縮小が進展している。
中央最低賃金審議会では全都道府県をA・B・Cの3つのランクに分けて、
改定額の「目安」を提示したが、目安を上回る地方が8割を超え、とくにCランクの地方圏で
大幅に上回る引上げが目立った。
例年8月中に答申が出揃うが、今年は審議が長期化したため、
9月にずれ込む県が多数あった。
さらに昨年は46都道府県で10月中の発効だったが、
発効日の先送りが増加したことも今年の特徴となった。
中央・地方での審議の中で、今回は引き上げ幅が大きいこともあり、
使用者側から周知期間の十分な確保や「年収の壁」による就業調整による人手不足の
一層の深刻化等のさまざまな影響も考慮すべきだとの意見が出されていた。
そのため、各地方審議会では実態に即して、発効日を柔軟に設定することが
望ましいとの意見もあった。
また、地方審議会での議論では、引き上げの根拠として地域間格差による
「労働力人口流出」や「地域間格差是正」を挙げていることが特徴となっている。
労使間の意見の隔たりも目立った。
労働者側は「春闘における賃上げ結果」や「物価高対応」を強調する一方、
使用者側は原材料費・人件費の高騰や中小企業の支払い能力への懸念を前面に打ち出した。
採決に当たって使用者側が退席した県が複数(一部を含め熊本、岩手など)あった。
地方審議会では使用者側が目安への上乗せに反対するケースが目立ったものの、
最終的には、物価高騰による生活支援の必要性と地域間格差是正の観点から多くの県が
目安を上回る公益委員の裁定を踏まえた答申となった。
■最賃引上げに向けた政府の支援が加速――全国の新聞に全面広告も
この地域別最低賃金の動向を踏まえた政府による最賃引き上げに向けた支援も加速している。
中央最低賃金審議会では、政府がとりまとめた
「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び
「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)に基づき、
「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」
とした政府目標をとの整合性を踏まえて、審議が展開した。
最終的に取りまとめられた公益委員見解では、
法定三要素(労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力)
に基づきつつも、物価上昇を重視。
とくに「頻繁に購入する品目」(食パン・鶏卵など)に加え、
「基礎的支出項目」(食料・光熱費・医療費など)を広く参照し、
購買力維持の必要性を強調した。
「過去最大の引上げ」と「地域間格差是正」という政府が設定した二つの重点的な
課題を踏まえた報告となったが、地方の審議会でもこの二つの軸での議論が展開した。
加えて、政府目標を踏まえた政府の積極的な関与も今回の審議に影響を及ぼした。
赤沢亮正・経済再生担当相(賃金向上担当)は、8月14日、福岡県の服部誠太郎知事と面会し、
最低賃金の引き上げに向けて県の協力を要請。
また、8月19日に愛知県を訪問し、大村秀章知事と最低賃金についての意見交換を実施している。
政府は最低賃金の引上げへの対応について、
「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の中で、
価格転嫁・取引適正化の徹底、生産性向上、事業承継・M&Aを通じた経営基盤の強化などの
施策を総動員することを決めており、厚生労働省と経済産業省はその一環として、
生産性向上の支援策を強化している。
具体的には、最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者に対し、
当面の措置として、
(1)業務改善助成金(厚生労働省)、
(2)ものづくり補助金(経済産業省)、
(3)IT導入補助金(経済産業省)、
(4)中小企業省力化投資補助金(一般型)(経済産業省)の助成金及び補助金
――ついて対象の拡大、要件緩和等の措置を講じる。
また、賃上げ原資の確保支援では、価格転嫁対策の強化策として、
「中小受託取引適正化法(取適法)」の来年1月からの施行を予定している。
さらに、賃上げ促進税制では、赤字企業でも利用可能な繰越控除制度を含む税制優遇措置をとる。
全国の中小企業・小規模事業者に、これらの支援策を活用してもらうため、
全国的な普及広報の取り組みを強化している。
政府広報の一環として、9月26日には全国紙をはじめ地方紙にも
「安心して暮らしていける最低賃金へ」と題する全面広告を掲載。
各都道府県の改定動向の一覧や上記の助成金及び補助金について、
QRコードを印字しつつ、その活用を促している。
さらに、働き方改革推進支援センターやよろず支援拠点、
中小企業関係団体等を通じて、きめ細かい相談、助言等の対応を実施する。
■連合が「未来づくり春闘」評価委員会の報告書を公表、6つの提言を示す
政府が賃上げのイニシアティブをとる動きが強まっているなか、
連合(日本労働組合総連合会)は、「賃金決定はあくまで『労使自治』が前提。
物価を1%程度上回る賃上げ継続という『賃上げノルム』の定着を図る」などを内容とする、
『「未来づくり春闘」評価委員会報告書』を9月19日に公表した。
この委員会は、春闘の第三者評価・今後の方針の検討などを行うことを目的として
設置された有識者による委員会。玄田有史・東京大学社会科学研究所教授が委員長を務め、
同副委員長・渡辺努 ナウキャスト創業者・取締役(東京大学名誉教授)、
委員として山田久・法政大学大学院教授など、7名で構成している。
報告書では、連合集計によると、直近2年間は定昇込みで5%を超える賃上げが実現し
賃上げの動きがより力強さを増していると評価しつつも、
日本全体の実質賃金が連合のめざす1%以上の上昇軌道には未だ乗っていないこと、
さらに中小組合では賃上げ率が全体を下回っており格差が生じている
――ことを指摘。
そのうえで、具体的な克服すべき5つの課題をあげる。
第1の課題は、春闘における賃金要求基準をいかに組み立てるか。
これまでの春闘では、生計費を確保する観点から過年度物価上昇率を重視してきたが、
実際の(当年度の)物価上昇率とズレが生じてしまい、
こうした物価の後追いとなる賃金要求では、人々に前向きな賃金上昇期待を抱かせることが難しい。
第2の課題は、様々な統計データから得られる賃金上昇率の精度をいかに高めるか。
賃金交渉に当たっては、個々の労働者の賃金動向を正確に把握する必要があることを踏まえ、
精度の高い賃金上昇率のデータを整備し、要求や交渉に活かしていくことが求められる。
第3の課題は、中小企業において持続的な賃上げをいかに実現していくか。
日本の労働者の約7割が中小企業で雇用されている現実を踏まえ、
中小企業とその労働者が「賃金と物価が上昇する健全なサイクル」に移行し、
大企業との賃上げ格差を是正できるよう、手立てを講じる必要がある。
第4の課題は、労働組合が主体となって行う賃金交渉(春闘)の結果を、
いかにして社会全体(特に組合のない企業や非組合員)に広げていくか。
労働組合の組織率は趨勢的に低下を続け、2024 年は 16.1%にとどまるなか、
昨今は賃金決定の個別化が進み、春闘を起点とした社会全体への波及力は
以前ほどの力強さが見られない。
第5の課題は、今後の最低賃金引き上げをいかに持続可能なものとしていくか。
政府は 2020 年代に最低賃金 1,500 円(全国加重平均)の達成を目標に掲げているが、
これは年率7%超のペースでの引き上げに相当する。
持続的に最低賃金を引き上げていくうえでは、労使間で協議しながら、
産業・職業ごとの生産性や人手不足の状況を反映することが不可欠で、
現状は一部の産業(適用労働者約 300 万人)にとどまっている
「特定最低賃金」の活用も検討すべきである。
そのうえで、課題を克服するための6つの提言を行っている。
提言1は「要求基準のあり方」で、課題の克服に向けて、
(1)過去のインフレ実績ではなく、将来のインフレ見通しを要求基準に反映させる、
(2)実質賃金に関するキャッチアップ条項を導入する、
(3)人手不足要因を要求基準に反映させる、
(4)積極的な情報発信により労働者の中長期的な賃金予想を安定させるの4点を提案した。
提言2は「労働組合がもっているデータの活用と分析能力の向上」。
平均賃金が3%上がっても、すべての人の賃金が3%上がっているわけではないことから、
個人別賃金の把握・分析が必要だとし、
(1)労働組合は、個人別賃金を把握・分析し、賃上げによって生活向上が実現したか点検すべき、
(2)賃金データの共同利用、労働組合の分析能力の強化に取り組むべき
――と提言している。
提言3は「中小企業の課題と経営者への働きかけ」。
中小企業団体などに対して、経営指導員などによる助言や支援活動の際に、
持続的な賃上げを組み込んだ経営計画を策定するよう連合から要請する。
さらに、政府や金融機関などに対して、自治体や金融機関の支店等に設置されている
経営相談窓口等において、生産性向上対策とそのために活用できる政府の支援策等を
ワンストップで相談に乗り、必要に応じ伴走型でフォローできる体制をさらに
強化するよう連合から要請する。
提言4は、「労働組合が果たすべき役割(労働組合のない企業への影響力の拡大)」。
労働組合は、
(1)積極的な情報発信、
(2)社会的合意形成と機運の醸成、
(3)相談活動等の強化によって労働組合のない企業への影響力を強めるべきだとしている。
提言5は、「特定最低賃金の活用」。
申出要件、新設ルール、審議プロセスの見直しによって特定最低賃金を活用しやすくし、
産業活性化と産業別・職種別の賃金相場形成をはかるべきだとしている。
さらにその第1ステップとして、エッセンシャルな各産業分野において、
公労使三者構成の専門委員会を立ち上げ、事務局が準備した賃金格差データや
労働不足の客観的状況などを踏まえ、特定最賃の具体的な導入ビジョンを提示する。
提言6では、「2026春季生活闘争に向けたスタンス」を取り上げ、まず、
「物価を1%程度上回る賃上げ継続という『賃上げノルム』の定着に向けた政労使での共通認識の形成」
が必要だとする。
そのうえで、
(1)過剰な人手不足から緩やかな人手不足への転換を可能にする実質賃金上昇への貢献、
(2)生活向上を実感できる賃上げの実現とそのための将来見通しの明確化、
(3)長期不況や賃金停滞を生んだ「賃金は上がらない」というデフレマインド再燃の回避、
(4)適切な価格転嫁・適正取引など、中小企業が賃上げ可能となる環境整備の働きかけを求めている。
いずれにしても、賃上げは政府主導ではなく、
「労使間の合意を手間がかかってもきちんと形成することが肝要だ」
ということを強調している。(荻野 登)
★☆★編集後記★☆★
健康保険組合連合会(健保連)は、昨年度(令和6年度)の決算見込みを
9月25日に公表しました。
大企業の従業員が加入する健康保険組合は2年ぶりの黒字です。
●保険料収入の増加要因は、
1.賃上げ効果 53.4%
2.保険料率の引上げ効果 25.1%
●支出の増加要因
1.保険給付費
患者1人あたり1ヵ月の医療費1千万円超えが前年度から8%増
2.高齢者医療制度への拠出金が4割
現役世代の保険料負担で高齢者医療制度を支える構図が続いています。
健康保険組合全体では145億円の黒字ですが、加盟する1378の組合のうち、
半数近くの660の組合が赤字となる見込みです。
健康保険組合の保険料率が政府管掌より高いところもあります。
毎年3月に公表される保険料率に一喜一憂しています。
気温も下がりはじめ秋の気配を感じます。
今夏の猛暑の日々を乗り越えましたが、疲れが出てくる頃です。
くれぐれもご自愛ください。 (白石)
==============================================
★----------------------------------------------------------
発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp
----------------------------------------------------------★
今月のメールマガジン第282号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容を充実していきたいと思います。
ご感想は info@koyousystem.jp にお願いします。
「こんな記事が読みたい!」というリクエストも、遠慮なくどうぞ。
次回の配信は11月初旬頃情報を送らせて頂きます。
e-mail: info@koyousystem.jp
[過去のメルマガ随時更新]⇒ http://www.koyousystem.jp
==============================================
メールマガジンの配信が不要な方は、お手数ですが、
こちらhttp://www.koyousystem.jp/mail_magazine.html から
配信停止を行って下さい。